アトス山 1月20日

目が覚めたら真っ暗だった。
朝の4時。もうお祈りの時間が始まってた。
同じ部屋にいた人はいつの間にが消えてた。起こしてくれてもいいのに…
ダウンを着て帽子をかぶる。マフラーで首の周りをぐるぐるにする。
修道院の古くて美しい階段を駆け下りる。誰もいない。
アトス山の冬の夜は凍えるほど寒かった。

教会は中庭のまんなかにあった。
ダークブルーの空に浮かんだ修道院の真っ暗な中庭をひとりで歩いてく。
真っ暗い教会のドアをゆっくり開けた。
あ、開けれるし音がしない。遅れたからもう閉まってると思ったんだけども…

真っ暗な部屋に蝋燭の灯りが灯されてる。それでも暗かったけども。目がなれてくると人が暗がりにいるのがわかった。
よく見えないけども、きっと私をみてるんだろうな…
ローブをかぶった僧侶が椅子に腰掛けてる。スターウォーズのジェダイみたい。かなり歳とってるようにみえた。
十字を切ってイコンにキスをする。イコンは2つあったから2回キスをする。
まんなかのドアをくぐって中の部屋に入った。
柱の横の大きな椅子に腰掛ける。

部屋は真っ暗で方向がわからなくなったけども詠唱は左側からきこえてくる。
天井から銀の燭台が降りてきて火を灯す。
しゃりんしゃりんと鈴の音をたてて銀のお香がブウンブウンとゆれてる。
ぼーっとしてくる。またあの子泣いてる。同じ泣き声。
奥の扉が開くと暗がりにぼんやりと金の3つの丸がみえた。
あれはなんだろう?三位一体の三位なのかな
でもお腹減ったな…

朝ごはんでリンゴをナイフで剝いた。
修道院のご飯は毎回ベジタリアンだけどもすごく美味しかった。
食べ終わって昨日の僧侶の人に話しかけられる。
渡した本は読んだ?
最初のドリルで地面掘るのだけ読んで寝ちゃった

ベランダでよく泣いてた子と話した。
スケートが好きなんだ、いまは修道院にいるけども
私はインドから陸路で来たんだよ
すごいねw今ウィードがあればいいんだけどね
寒そうな海を背景にしてそんなことを言う、なんで泣いてたの?って聞けなかった。

朝の9時にバンが出発って聞いてたけども、驚いたことに9時を過ぎてた。
次のバンはもうなかった。
次の修道院にいきたかったのに…
部屋にもどったら同室の人はいなくなってた。教えてくれてもいいよね。

鍵を返して修道院を出た。
バスは止まってなかった。クルマ1台止まってない。
やっぱり行っちゃったのかな。目的の次の修道院は歩いたとしても50km離れてる。

枯れ木の写真を撮ってたらバンが来て客を降ろしてく。あ、乗れるかも。
乗れる?
30分待ってろ
うん

バンに乗って島の中心の街に帰ってきた。中心っていっても小さなカフェが2軒あるだけだけども。
次の修道院までのバンがくるまでカフェで待ってた。

古い木の椅子に座ってると昨日の修道院で会った人がお菓子を買ってくれる。
この島の特産品なんだって、蜂蜜たっぷりのそのお菓子はとても美味しかった。
ギリシャって食べ物がおいしいよ。
明るくてカッコいいお爺さんはスイスから来てておしゃべりだった。仏教の禅のこと、仏教とキリスト教の違いを教えてくれる。
紙に違いを書いて説明してくれる。何人も彼女がいるっていってた。
いそうだけどw
黙ってたらずっとしゃべってそうだよw

バンに乗って島の南の先端まで走ってく。途中で川をためらいなくタイヤを乗り上げてザブザブと渡っていった。

今度の修道院では部屋は大部屋だった。
青くてすこし暗かった。
外で同じような巡礼の人たちとお話をする。

この島にはひとりで過ごす修道僧も何人もいるんだよ
彼らが信仰心がいちばん強くて洞窟で死ぬまでお祈りしてるんだよ
ずっとお祈りしてて出てこないから、健康を心配してほかの僧が食料を篭に入れてロープで降ろすんだ
その篭から食料が取られなかった時、死んだってわかるんだ

お祈りは中の部屋まで入れなかったけども
大部屋でハリーポッターみたいにみんなで食べた夜のパスタとオリーブはめちゃめちゃに美味しかった。
あ、このテーブル石でできてる…