イスファハン 1月30日

歩いてると詠唱が聴こえてきた。道の反対側の小さなモスクから聴こえてくる。
あとで行ってみようかな?
いろんな国でお祈りしてきたけど、気持ちがいつも軽くなってた。

大きな交差点でおじさんが両替するよって言ってくる。
レートも悪くなかったし、両替してもらった。

左右がお店でにぎわう歩行者天国の道を歩く。遠くにイスラムの門がみえる。

門を通ってイマーム広場に入った。あまりに広くて、遠くのモスクが霧で霞んでる…
世界の半分って言われたイスファハン。シルクロードを通る隊商はこの広場で休憩したり売買したりしたのかな。
21世紀のいまは早朝、誰もいないけど。

 

掃除してる人が数人いるだけで、薔薇の花がきれいに手入れされてた。
反対の門の先で水を買って広場を散歩。
広場の周りはお店になってて伝統工芸品とか売ってた。銀細工や接木でできた箱、薄い銅を青く塗った食器、ラクダの骨でできたケース。
どれもすごく細かくて繊細ですごいな、でも高いんだろうな。
そういえばターコイズでできた魚のネックレス、かわいかったな…あとでまた来てみる。

 

イマーム広場には東西南北の4つの辺にそれぞれ世界遺産の建築物があって、
北にダールワーザ・イ・カイセリーヤ門
南にイマームモスク
東にシェイフ・ロトフォッラー・モスク
西にアーリーカープ宮殿

があるみたい。
せっかくだし入ってみることに。

アーリーカープ宮殿、どうやって入ればイインだろ?
準備してる人に聞いたら600円ぐらい。すこし高いよーって言ったら、1000年以上前の遺跡に登れるんだし、触ることもできるんだから安いもんだよーって言われた。
ふふっそうかもね。

チケットを買って階段を登ってった。
きれいなタイルがはめ込まれた壁や階段を歩いて登る。
ひろーいイマーム広場が見渡せる。写真では何度も見たことのある光景。
ぱちり、写真を撮った。

まだまだ上があるみたい。
階段を登っていくと音楽堂になってた。音が反響しないように複雑な木の壁で覆われてた。音楽の文化が進んでたんだろな。

 

イマーム広場を出て南に歩いてるとおじいちゃんに声をかけられる。あれ?おじいちゃん日本語?
日本でペルシャ絨毯を売ってたんだって。今は語学の教師をしてるって言ってた。
イランに日本人は珍しいよ数週間ぶりだって、おじいちゃんが観光案内をしてくれることになった。

おじいちゃん、めっちゃ足速いんだけど。
急いでついて回る。

オススメのカフェがあるよ。
連れてってもらえたのはランタンがいっぱいぶら下がってるバザールのチャイハネ。硬い砂糖の塊を口に放り込んで紅茶を飲みながら溶かしてく。

 

カフェでイランの言葉や文化をいろいろ教えてくれる。日本語のわからない表現もいくつか聞かれた。
やっぱり語学の先生なんだね。
ガイドブックには載ってないバザールのきれいな場所をいくつか連れてってくれた。
イランは世界一のホスピタリティの国って聞いてた。歩いてるだけで親切にされる。
街の人は明るくておしゃべりで、女の人も賑やかで強くて。日本で流れてるイランのイメージと現実はあまりにも違ってた。
おじいちゃん、ありがとうね。冗談ばっかり言ってるけど。日本に来たら連絡してね。私が親切にするよ。
手をふって別れた。


 

公園を歩いてると歌声が聴こえてくる。
スピーカーから流れてるのかな?
声のほうに歩いてくとベンチに座ってる小さなおじいちゃんが歌ってた。
声量すごいな…
その声は公園に響き渡っててみんな足を止めて歌声を聴いてる。
歌い終わってみんなが拍手。おじいちゃんは笑ってベンチを去っていった。なんだろう、ずっと、もっと聴いてたかった…。

イスファハンの街を歩き回った。
古いモスクを改修した高級ホテルを冷やかしたり、ファーストフードでめっちゃデカいハンバーガーを食べたり。
何百年も前の橋は今でも使われてた。なのに川に水は流れてなかった。地球の歩き方も写真だと水が流れてるのに…雨季とかあるのかな?

 

アルメニア教会の近くにくると街並みがヨーロッパみたいになったような気がする。カフェとかも増えた。この地区にはキリスト教の人たちが住んでるんだって。
その中心になってるアルメニア教会、高いチケットを買ってなかへ。
鮮やかな宗教画が天井に描かれてた。モスクの細かくて幾何学のタイルと違う文化なんだなって思う。

 

帰り道、疲れちゃってバスで帰ろうとしてたら男のコたちに声をかけられる。
少年たちはみなアイスを食べてた。
ちょっと待ってって言われて待ってると、なんとアイスクリーム屋さんからアイスを買ってきてくれた。
えー、イイの?
表情も変えないで気にしないでって手をふる。

みんなで無言でアイスを食べるイスファハンの夕暮れ。お互いに気なんか使わなかった。