ガフサ 2月11日

テントを出たら夜空の遠くにオレンジの街の灯りがみえた。
毛布をかぶって夜の砂漠を歩いてみた。
星が地平線の近くまでみえてる。星が多すぎて見上げると倒れそうになる。
世界はモノトーンだけど街だけはオレンジにみえる。
砂にずるずると、引きずられた毛布があとをつけてた。
立ってると平気だったけど、冬のサハラ砂漠はやっぱり寒くて。テントにもどって重ねた毛布をアタマの上までかぶった。

朝ごはんは砂の中で焼いたナンとバター。フンコロガシがサササと小さな波紋を砂にのこしてく。
南京虫にかまれたあとが痒くて抗ヒスタミン剤をラムネみたいに齧ったらふらふらになる。
死人みたいにラクダにゆられて街にもどった。

ケビリのバスターミナルは郊外だったからタクシーに乗った。ドライバーは燃料はプロパンとベンジンの2種類で手もとで切りかえれるって言ってた。
バスターミナルは荒れ地にあって塀で囲まれてた。
まぶしい太陽をさけてバスを待ってたら映画みたいなノリノリの黒人と仲良くなった。
彼は私のことをすぐからかった。科学の先生で34歳だっていうけど、ほんとに先生なのかな…w

嘘?もっと若く見える
髭に白いのが混ざってるだろ?
ホントだ…
国費留学でフランスに住んでたんだよ
頭がイイんだね
プログラムってどうやったら上手くなれる?
誰にも聞かないで自分で調べればすぐ上手くなるよ
ほら、塩の湖、見たかったんだろ?

青い空にまっすぐな白い地平線。
真っ黒い円盤みたいなのが蜃気楼で浮いてる。
塩の湖は観光地でなかったけども、俗っぽいサハラ砂漠なんかよりずっとずっと透明にみえる。
ずっと砂の地面を歩いてみたかったな…

ガフサに着いたのは夕方。
また戻ってきた私をみてカッコいいけど偏屈なホテルのスタッフが笑った。

やっと笑ってくれたんだ
なんでガフサなんかに?
だってこのホテル、すごくきれいだったから

洗濯をしてケーキを買ってカフェで北アフリカ最後のシーシャを吸った。
明日は深夜に友達のいるポルトガルへ飛行機で飛ぶ。