クングラード 1月21日

ヌクスのバスターミナルはバザールの端にあった。バスターミナルは舗装されてなくて黒い土がむき出しになってた。
アラル海までのバスどこ?
聞いて乗せてもらう。

いちばん後ろの端っこに乗ってバックパックを抱きかかえる。
出発まで待ってたら隣のおじいちゃんが話しかけてくる。
バス代を両替させろっていう。
2枚のお札を渡すと20枚になって返ってきた。意味がわかんないままそれを車掌の少年に渡した。

はじめおじいちゃんが何をしてるのかわからなかった。あーなるほど、自分の持ってる小さな紙幣を大きな紙幣に替えてんだ。どうせすぐにバス代で払うから誰も文句を言わないで両替してくれる。

少年の車掌さんだけが、おじいちゃんにもうやめてよーって感じで話してる。おじいちゃんは気にすんなって感じで手を振ってた。

ふふってなった。

 

走り始めたバスの中では街の人たちの雑談が始まってた。
ウズベキスタンの人たちはおしゃべりで、知らない人たちですぐ盛り上がる。

中学生の女のコがお婆ちゃんの耳にイヤホンを突き刺すと、お婆ちゃんが手をふって踊りだしてた。
おじいちゃんは次々と両替をしていくし。
にぎやかだなって思う。たのしそう。

目の前の小さな女のコが自分にスマホを向けてる。
画面をみた。

Where you from?

あ、翻訳アプリを使ってるのかな?自分もウズベク語に変換してiPhoneをみせる。

Japan

Where you go?

Alaru

ポチポチ、ポチポチ。数時間のバスの旅。
笑い合いながらお互いに質問しあった。
バスは北へ、黄色い荒野を砂ぼこりをあげて走ってった。

 

終点はレストランもない小さな街ムイナク。
アラル海が広かったころ街は漁村だったのかもしれない。いまは何もないけど。

アラル海まで歩いて4km。歩いて行けなくもないけど、背中のバックパックがつらい。つい、声をかけてきたタクシーに乗ってしまった。
タクシーは窓全開で大音量で音楽をかけて走りだす。ドコドコと窓から音楽が溢れだしてた。
うあ、みんなコッチみてる…恥ずかしいんだけど…
ドライバーはサングラスをキメて外に向かってなんか叫んでるし…

タクシーはアラル海を見渡せる丘の上についた。
小さな灯台みたいな建物。
横には遊牧民のテントが並んでた。たぶんアラル海を見に来た観光客用のテントなのかな?

風がびゅんびゅん吹いてる。
丘の上からみえたのは世界中を旅してきた中でいちばん広い地平線。
どこまで続くんだろ?

ココは50年前まで世界で2番目に大きな湖だったんだって。

錆びついた船が崖下の荒野に並んでる。
滑り落ちないように降りた。

錆びついた船によじ登った。天井、抜けて落ちたりしないかな?屋根の上へよじ登った。
あと、5隻ぐらいあるけど。ぜんぶ屋根登る?

 

崖の上でぼーっとアラル海を眺めてるゴツいおじさんに話しかけると、彼はタクシードライバーでロシア人を連れてきてるそう。
指さした先には、崖下で船によじ登ろうとしてるロシア人がいた。

帰り道、クングラードまで乗せてってくれることになった。
ひょろひょろした寡黙なロシア人とゴツいドライバーと私の3人で南へ飛ばす。行きはバスだったけど、タクシーだと速いなー。

ドライバーのおじさん、クングラードでお祭りやってるから見ないか?だって。

郊外の広場でお祭りを見ることになった。
お祭りの広場にいくとモンゴルずもう?やってたり。羊の頭突きとかやってる。
周りをぐるーっと人が囲んでみてた。

柔道はつまらなかったけど、羊の頭突きがすごかった。
羊たちが10mぐらい離れたとこから全速力で頭突きをする。

ガァンってバカでかい音が広場にしてた。
頭突きのあと、また距離を置いて頭突きし合う。

ひええ、痛くないのかな?
見てるとアタマからだらだら血が出てる羊もいるし。頭蓋骨、割れたり、砕けたりしないのかな?

骨ってめちゃめちゃ丈夫なんだなって思った。
広場ですこしでも羊に近づくと、周りから危ないって注意される。
やっぱり気が立ってるのね。

 

ドライバーが駅前の安宿に連れてってくれた。看板もなくて絶対に宿ってわかんないような門と家をくぐった先。
クングラードなんて街に観光客は来ないだろうし、もしホテルがあったとしても一軒だけで高いだろうなって思う。ドライバーに連れてってもらって正解だった。
そこは民家って感じで10ドル。
ドアの鍵がなかったから、ロープでドアノブをぐるぐるにした。

遅い朝ごはん兼お昼ごはん、あと蚊がいたから蚊取り線香を買いにクングラードの街へ。
小さな民家が並んでるだけだし、街ってより村って感じだなー。

うろうろして、小さなレストランへ。
マトン料理を2皿も頼んでしまって、量多すぎたかな?
でも、めちゃめちゃ美味しい。中央アジアは肉がめちゃめちゃ美味しいと思ってたけど、ココはさらに美味しかった。
でも、やっぱり2皿は多かった。

 

あとは蚊取り線香。
小さな売店で蚊取り線香、うまく言葉が通じない。ふたりでげらげら笑ってしまう。
もうひとつのお店で蚊取り線香が買えた。日本のみたいなぐるぐるの蚊取り線香じゃなくて、ロウソクの形だった。
5色入っててかわいい。

売店の人たちと仲良くなって写真を撮った。ウズベキスタンの人たちってホントに明るいよね。

夜、部屋のドアを開けたら、すごい満点の星空だった。
クングラードはウズベキスタンの北にある小さな街。明日はココから300km北へ。カザフスタンの国境を越えるつもり。