サマルカンド 1月12日
タクシーで30km離れたウルグトのバザールへ。スザニっていう生地で有名な街みたい。
サマルカンドはずっと憧れてたし、もっと長居するつもり。だけど、すこし遠くに行ってみたくなった。
いちばんの理由は他の旅行者から離れて1人になりたかったから。
タクシーは乗り合いなんだけど、乗ってたのは自分だけ。
ときどきドライバーが緑の粉を手のひらから吸い込んで自分にも勧めてくる。なんだろう?ドラッグ?前にもバスのドライバーが吸い込んでるのも見たことあるし。
あとでわかるんだけど、これはタバコみたい。
中央アジアの荒れた道をタクシーはガンガン飛ばしてく。怖い。メーターみると100km超えてるし。
途中で赤ちゃん連れた女性も乗せる、おじいちゃんも乗せる。で、砂煙を巻き上げて遠くの山脈に走ってく。
山々のふもとウルグトの街に着いた。スザニバザールに連れてってもらおうとすると、今日はやってないみたい。
最初からドライバーもそう言ってたような気もする。今日はやってないよって。
まあ、いっか。
ふつうのバザールは開いてたので歩いてまわる。
歩いてるといろんな人から声をかけられて、一緒に写真を撮ったりする。
ウズベキスタンの人たちって明るい。
手を振ったり葡萄を食べさせてもらってると、バザールの奥の建物の2階にカフェがみえた。
カフェじゃなくてチャイハネっていうらしいンだけど。
ボロボロの木の階段を上がる。
老人たちがチャイを飲みながら絨毯の上でなんか話してた。
キッチンまで行ってコーラって言うと、ふらふらとおじいちゃんが出てきた。
買ってくるから待ってろって、おじいちゃんは階段を降りてバザールに消えていく。
その背中を見ながら、あ、悪いことしたなって思った。
コーラなんてメニューに無いものを頼んでしまった…
10分後、おじいちゃんがコレでしょ?ってコーラを手にもどってきた。
もう片手にはメロンを持ってる。
サービスでメロンまで食べさせてもらえた。う、う、ありがとう。罪悪感を感じてしまう。
コーラ飲みながらぼーっとする。
階段の横には大きな鳥籠が置いてある。なかにはニワトリがいた。
卵をとるのかな?
遠くには白い中央アジアの山々。
バザールの喧騒を聞きながら、ものすごく贅沢だった。
サマルカンドまで乗り合いタクシーで帰った。
ドライバーは大学生で今日はタクシーで稼いでるんだって。大学ではフットボールしてて、選手になりたいみたい。
イタリアとかのサッカーチームの話をされたけど、ぜんぜんわかんなかった。
サマルカンドで写真を撮って別れた。
サマルカンドの近くにはコニギルメロスっていう水車のある街があって。
その街では世界一丈夫な紙っていわれるサマルカンドペーパーが1300年以上まえから造られ続けてる。
ごった返す通りでコニギルメロス行きのバスを待ってると、英語が話せるコに話しかけられた。
話してると家族の話になった。写真を見せてくれる。
雪の教会の前で笑ってるおじさんの写真。雪?ヨーロッパ?
お父さん?
うん。ドイツでピザを配達してるんだ。自分も大学を卒業したら韓国で働きたい。
日本みたいに外国人は低賃金で働かされたりしないのかな?働くなら欧米がいいかも。
いろいろ話してると1番のバスがきた。
もっと話してたかったけど慌てて飛び乗る。
それじゃあね!またね!
バスは黄色い砂と淡い緑のあいだを走ってく。
ちょうど小学校が終わったみたいで、子供たちがいっぱい乗ってた。
目が合うと恥ずかしそうに笑う。
ウズベキスタンのバスは老人が乗ってくるとすぐ席をゆずる。びっくりする早さでゆずる。他の中央アジアの国もそうだった。
宗教的な理由なのかな?
コニギルメロスてドライバーに言われて降りた。
砂煙をあげたバスは去って行った。
人がいない、ぽつんとした通り。クルマが通ってないからか音がしない。
横には水路に水車が回ってる。
歩いてさがすか…
サマルカンドペーパーの工場を探してうろうろ歩いてると、後ろから小さなトラックがクラクションを鳴らしてとまった。
運転席にムスッとしたおじいちゃん。乗れって手招きしてる。
なんだろう?どっかお店に連れて行かれるのかも。
助手席に乗ってサマルカンドペーパー探してるんだっていうと、こっちを見もしないで頷いて走りだした。
タクシーかな?英語は通じなさそう…
坂を降りてってトラックは綺麗な建物の前に停まった。顎でおじいちゃんがアレだっていう。
タクシー代を払おうとするといらないって。
中央アジアはみんな親切だって聞いてたけど、ホントにそう思う。
ラフマット(ありがとう)って言うと気にすんなって感じで片手を上げてトラックは道を戻ってった。
工場はとても綺麗で小さな川が流れてた。
見学してもいいか聞いたらチャイとお菓子を食べさせてもらえた。
8世紀から作られて続けられてて世界一丈夫って言われるサマルカンドペーパー。
どのくらい丈夫かというとサイフにもなるぐらい。
外からは小鳥の声が聴こえる。
コニギルメロスって村はすごく静かで、きっとクルマが走ってないから。