シーラーズ 2月3日

この村にはバスターミナルはないけど、バスは通る。

交差点へ行くと老人たちが3人ほど道端に座ってた。
中央アジアの田舎にいくとよくみる風景、老人たちはあまりしゃべらないけど並んで1日ぼーっとしてる。
バスがいつ来るか聞くとスリーって言ってる。30分後かな、たしかネットでも9:30だった気がする。
バックパックを道端に降ろして同じよーに座った。

のどかな砂漠の村。こういう生活もいいのかもしれない。
時計をみたら9:30過ぎてた。遅れてるのかな?他の人にも時間を聞いてみる。
スリー、スリーオクロック。

え?15:00?
あと5時間…

今日は日曜日だから朝のバスはないみたい。

うーん、どうしよう。
昨日いっしょにいたオーストラリア人はヒッチハイクで旅をするっていってた。
私もヒッチハイクしようかな。

歩いて村の入り口へ。狭い村だからすぐ反対側にでた。
イランでは親指をあげるのは、Fuckの意味。かわりに道路に手を出して手のひらを下にしてひらひらさせる。

 

1台目トラック、気づかないで行っちゃった…

2台目バン、行っちゃった…って思ったらすこし先で止まった。
え、ホントに?まだ2台目だよ。

ヒッチハイク、ヨーロッパで何度か挑戦したことはあるんだけど、ぜんぜん止まらないものだから、ムリだと思ってた。

バンに乗るとおじいちゃんが2人。
2人とも学校の先生で語学と数学を教えてるんだって。助手席に座ってるとザクロや葡萄、チャイを振舞われる。
イランのホスピタリティは世界一って聞いてたけど、ここまでしてくれるなんて。

おじいちゃん、さっきまで食べてたザクロが手から消えてる。どうしたの?窓から捨てたよ、だって。
私も食べ終わったザクロを窓から放り投げた。

なにか書くものない?って聞かれた。
もしかしたら料金を請求されるのかもしれないって身構えた。最初のヒッチハイクが、気持ちが、台無しになる。

 

イスファハンのバスターミナルで書いて渡されたのは住所と電話番号だった。
困ったことがあったらいつでも連絡してきなさい。
ハグして別れた。
疑った自分がゴミのようだなって思った。

おじいちゃんたちはシーラーズへ行くって言ってた、実は私もそうだったんだけどイスファハンで降ろしてもらった。これ以上親切にされると罪悪感で潰れそうだったから。

バスターミナルでシーラーズ行きはすぐ見つかった。ベンチでバナナを食べて時間を潰す。

また、ひとりに戻っちゃったな…

 

バスは南へ。荒野を500km走ってく。

 

シーラーズに着いたらもう夕方になってた。タクシーが声をかけてくる。イランにもいるんだねタクシーの客引き。

歩いて宿を探す。
ターミナルを出て、高架橋で越えて、人のいない郊外のコンクリートの工場を抜けてく。

シーラーズ、道にバザールがあるんだね。もう暗くてよくわかんないけど。
通りはギラギラとネオンが瞬いて、サイバーパンクのアジアみたいだった。

売店で安宿ない?って聞いたらすぐ隣の建物を教えてくれた。
1000円ぐらい、巡礼宿なのかも。部屋は狭かったけど、窓から通りが見渡せて楽しかった。

共同キッチンでパスタをつくってたら、宿の人がスプーンを貸してくれた。
フォークがよかったんだけど、ま、いっか。

ベットに横になった。
窓からネオンの光がはいってきてる。
部屋の壁がネオンに照らされて真っ赤になったり、真っ青になったり。ドアのむこうからは誰かの鼻唄が聴こえてくる。
サイバーパンクの主人公の住んでる部屋ってこんな感じだったっけ?