ソンクル湖 12月29日
朝の9時、バックパックに荷物を詰めてると外でクラクションの音。
ホームステイ先のお婆ちゃんが来たよって教えてくれる。
ソンクル湖まで連れてってくれるドライバーが家の前まで来てくれた。
あ、はい、ってあわててバックパックを背負って部屋を出る。
デカい身体のドライバーが門のむこうに立ってた。
お婆ちゃんとはお別れ。
ありがとうね。洗濯物、ふかふかでした。
後ろに座ろうとしたら助手席に座らされた。
クルマは標高3000mのソンクル湖へ走り出す。
コチコルを抜けてぼーっと彼方の山脈をみてたら日本のことを聞かれたから、こんなに広くないよって答えた。
遠くの路上に羊の群れが見えた。
冬に備えて遊牧民が山から降りてくるみたい。
数日かけて降りてくるって言ってた。どこで寝てるの?って聞いたら草原にテントを張ってすごすみたい。
クルマの横を通り過ぎる羊、牛、馬。だんだん群れの後ろにいくと家畜の身体も大きくなってった。
クルマは小さな村に停まってドライバーは誰かとおしゃべり。
小さなロバが道端につながれてる、身動きしないでじっとこっちを見てる。
何時間もつながれてるの?耐えられるの?
クルマはまた走り出す。
もう道は舗装されてない砂利道を走っていく。遠くの家が小さい、遠くのクルマが小さい、かわりに景色がひろい。
小さな丘を越えたところで広大な谷がひろがってて、クルマを降りた。
風が冷たい。
急に明るくなった。仰いだら太陽が眩しくて風が強かった。
雲をぬけたんだ。
車窓がモノトーンになった。
ちらちらと雪が降ってきて、3500mの峠を越えるときには吹雪になってた。
道路の上30㎝ぐらいを白い雲のような空気が走ってる。
めちゃめちゃ寒そう。
ソンクル湖は雪じゃないとイイな…
ぽつんと、赤いトラックが道で停まってた。エンジンが故障してるみたい。
困ってるみたいで手伝うことに。
ドライバーと一緒にトラックを押してたら顔に氷のような雪がぶつかってきてめちゃめちゃ痛い。
なんだこれ。トラブルサプライズ。
いて、いてて。
吹雪のなかドライバーが大笑いしはじめた。いっしょになって笑った。
峠を越えると吹雪も消えた。
枯れた草原を走ってく。川もいくつかじゃぶじゃぶと越えて行った。
あれだよって指さすほう、雲でよく見えない、水平な青いライン。異世界みたい。
遠くの方にユルタの集落がみえた。
集落で降ろされると遊牧民のお婆ちゃんが出迎えてくれる。
ひとつのユルタに連れってってもらった。
あなたのだよ。
ココで寝泊まりするんだ…中が広くてびっくり。
ドライバーと手を振って別れた。
なにもすることなくて、地平の広がってる世界を歩いてみる。
馬がいる、馬っておとなしいよね。
近づいても全く相手にしてくれない。蹴られないように横から近づいて撫でたら湖にむかって歩き出した。
なんで無視するんだよう!
追いかけた。
しばらく馬といっしょに波のむこうをみてた。
ねえ、なにもないよね。
夜は別のユルタで遊牧民のお婆ちゃんとその孫といっしょにご飯を食べた。
チャイをたくさん注いでくれる。
冬だからこの集落も閉じるって、もう客も私ひとりだけだって。
暖炉でパキパキと薪の燃える音。
言葉は通じないんだけど、落ち着く。
今夜は満天の星空がみれそう。