テヘラン 1月13日

窓の外の荒地はだんだんと平たくなってって、岩や建物が消えてった。
太陽は沈みかけてて寒くなってきて、砂漠に入ったのかなって思う。
砂の大地に鉄塔が続いてく。

ヤズドを出た鉄道は5時間かけてテヘランに着いた。
もう夜の22時になってた。
テヘラン駅にずらっと並ぶ車両からは湯気がもくもくと出てて、スチームパンクみたい。

テヘランの西バスターミナルからカスピ海までバスが出てた。運がよければ夜行バスに乗れるかもしれない。
バイクに乗ったおじいちゃんに声をかけられた。西バスターミナルまで乗せてってくれるみたい。
バイクは小さな雪の降るテヘランの街を飛ばす。
夜のテヘランの雪はキラキラと輝いて顔にあたって溶けていく。
おじいちゃんはペルシャ語で何か言いながら強引にバックパックを前に移動させたり身体を触ってくる。
怖いよ前を向いて
言っても通じないし、この性格だと意味がなさそう。
手が雪で凍ってきた。

案の定、すこし離れたところで降ろされて何かよくわからないことを言ってるから、無視してバスターミナルまで歩いてった。

夜のテヘランにちいさな雪がふってる。
バスターミナルの周りではたくさんのバスが赤いネオンを撒き散らしながら客引きをしてた。すぐ横をクルマがびゅんびゅんと走ってく。
もしかしたらカスピ海のラシュトまでのバスが見つかるかもしれない。
ラシュト?
って聞きながらピカピカ光る巨大なバスのあいだを歩いてく。
人混みをかきわけて歩いてく。
バスはクジラのようにどこまでも並んでる。

数台目でラシュトまでのバスが見つかった。
もしかしたら、すごい上手くいったんじゃない?
急いで売店でパンを買ってくる。

すこしボロいバス。
まだ誰も乗ってなかった。
ドライバーの後ろにすわってスマホを充電させてもらった。ふたりでチャイを飲んだ。

暗い郊外を北にむかってバスは走り出す。