トズル 2月8日
バスターミナルでお爺ちゃんが話しかけてきた。
サハラ砂漠はもっともっと遠くにあって、1日に数本しかバスが通ってない。
きっとヒマだったんだとおもう。
お爺ちゃん英語じょうずだね
20年前はもっと話せたよ
チュニジアはフランス語じゃないの?日本や東アジアは英語だけど
コロニアルだよ、植民支配した国の言葉だよ
そういえば中南米はスペイン語だったりポルトガル語だね
世界中、どの国もそうだよ
あ、日本はアメリカに占領されてたから英語なのか…
そのお爺ちゃんは政府関係で働いてるみたい。すごいインテリで歴史をいろいろ教えてくれた。
英語を忘れないように、こうして時々話してるんだって。
穏やかで抑揚があって話してたらいつのまにか時間がとけてく。イタリアで会った移民のお爺ちゃんに空気がにてるなっておもう。
トズルまでのバスは満員で乗れなかった。
ガフサ女子と呆然と走り去るバスを見ながらベンチにすわって時間をつぶしてた。獣医を目指してるんだって。
次のバスは全力で乗り込もうって話した。
1時間後、彼女は私のバックパックを担ぎあげるとバスに走り込んだ。
バスで彼女は酔って大量に吐いた。
砂漠の景色がキライだっていう。他の国にいきたいっていう。
砂漠をみにきた自分は静かにするしか。きっとこの黄色い景色を毎日みてるんだろうし…
そして酔いに耐えれなくてバスを降りていった。
なんで自分はいっしょに降りなかったんだろう?調子のわるい人をほっといて。
砂漠の街トズルは乾いた黄土色で地中海沿岸みたいに白くなかった。
小さなカフェでケーキを食べた。
となりで太ったコがたのしそうにしてる。
スマホのバッテリーがフルになった。コンセントから引き抜いて歩き出す。
夕日のまぶしい墓地を通り過ぎた。さきにホテルがぽつんと建ってた。
コーヒーを飲みながら、ホテルの人とすこし話した。
ふつうパンには塩がたくさん入ってるけど、このパンには塩がつかわれてないんだって。
遠くの市場まで買いにくんだって。
そういってわたされたパンは真っ白ですごく美味しかった。
部屋にもってっていい?
もらったパンとコーヒーをこぼさないように廊下をあるく。