バリ島 3月31日
重いバックパックはスクーターの足元に置いた。
山奥の宿までたぶん5時間くらいかかるはず。
デンパサールの街を北へ、東へ。街はすごい渋滞してて、スマホで確認したら南に走ってたり…
レストランで朝ごはんを食べた。
バックに鍵を入れて、シートの下に入れてシートをガチャリと閉める。
あ、鍵…
サーって血の気がひいた。
鍵がないとシートは開けられないけど、鍵はシートの中…
パニックになりながらも、頭の片隅でなんとかなると思ってた。ここはインドネシアでムスリムの国。困ったら周りの人たちが助けてくれるハズ。
近くのおじさんに話をしたら、人がよってくる。
数分後、みんなでシートをこじ開けた。隙間からバックを引っ張り出してくれた。
やった…!
まわりに感謝するとみんな笑ってた。
旅にトラブルはつきもので、パニックになりながらも解決できて、そのたびに気持ちが明るく切り替わってく。
実はきのうの夜、相方と口論になって引きづってた。
でもそれもすっかり消えてた。
スクーターに乗って北へ走ってく。道が空いてくる。
そして少しずつ涼しくなってく。
バリ島は大きな火山島で標高は3150m。北の高原地帯はとても涼しかった。
一直線のゆるやかな上り坂がずっと続いてた。遠くには大きな入道雲がみえる。
バリ島はいつも入道雲で囲まれてて真っ白い城塞みたい。
雨がふってきた…
イヤな予感。インドネシアでは雨とスクーターの組み合わせで何度も凍えてるから。
かなりの土砂降りになってきて峠で休憩したら他にも休んでる人たちがいる。
温かくて甘い紅茶を飲みながら雨で白っぽく霞みになった谷をながめる。黒人の人は何も飲んでなかったけどインドネシアの二人と写真を撮ってた。
きっと山の上は雲が発生しやすいのかも。
雨は止みそうになかったから、雨の中スクーターではしった。標高2000mを越えててとても寒い。
湖の横にモスクとマーケットがみえた。
停まりたいって思った時には通り過ぎてた。
二つの大きな湖岸を走ってく。猿の群れがいたから停めて湖をながめた。東南アジアの中ではインドネシアの自然がいちばん好きかも。
でもインドネシアって東南アジアなのかな?どちらかというとオーストラリアに近いけど。
走ってるとクルマのヘッドライトだけが目立つ。雨はほとんど霧みたいになってて…きっと雲の中を走ってるんだろうね。
身体はガタガタと寒さで震えてきたけど、これから陽が落ちて暗くなっていくはずだし、今行ったほうがよさそう。
湖を抜けると急な下り坂になった。下っていくと気温が上がっていくのがわかる。
霧が消えて空がみえる。
振り返ると山頂が雲に覆われてた。あれを通過してきたんだ…
Goblegの街を通って左に。
美しい熱帯雨林を走って坂を上がって右へ…
宿について手をふった。
知ってる顔がびっくりしてる。
来るならなんで教えてくれなかったんだ?って笑われた。
2週間前に来て、オーナーの人たちと仲良くなった。オーナーは知的でやさしくて親切だった。
あのね、ニュピの日を経験したよ、デンパサールからずっと走ってきたんだよ
最近はロシア人の客が多くて、彼らはよくビザが切れてるよ
そうそう、土砂降りの雨で…
懐かしくて、ほっとして、いっぱい話した。
まだまだ夜は長くて、遠くの村からガムランの音が聴こえてくる。