パリ 2月17日
バスはちいさなカフェに停まった。
ヨーロッパの朝ごはんはクロワッサンでとても美味しい。灰色の空と枯れ木とまっすぐな道はその寂しいカフェによく合う気がした。
外は何もない草原。きれいで何もなくて、人の気配がしない。ずっとみていられる。
あとすこしでパリに着くけども、ずっと着かないでいいよ。
パリ郊外のバスターミナルに着いてメトロに乗ってポンピドゥー美術館へ歩いた。
夕方にチェニジアで仲良くなったフランス人に食事をおごってもらうことになってた。
でも、どうでもよくなってた。
明日の朝に飛行機で日本へ帰るし、旅はおわりって気持ちになってたから。
コロナとかアメリカの空爆とか、からっぽなニュースにふりまわされてつかれた。
ポンピドゥー美術館は閉まってた。火曜日はふつうに閉館日。
ルーブル美術館でも行こうかって思ったけど、もちろんそっちも閉館日。ノートルダム寺院にいたっては焼け落ちてる…
約束の時間までスタバとかマックで時間をつぶしてたけども6時間はながい。
広場で寒い中、船員だったっておじいちゃんと話してた。
へえ、フランスにもフレンドリーな人がいるんだね。
もし待ち合わせじゃなかったら、いっしょにカフェに行けたのにね。ワインくらいおごってくれたのかもね。
遅れてやってきた友達とイタリアンを食べに行った。いきなりテーブルの上の観葉植物をむしってパスタにまぜてた。これはバジルなんだって。かざってるのかと思ってた。
美味しかったけどもパスタが絡まって食べにくい。オリーブオイルもっと絡めればよかったかな…
パリでいちばん美味しいっていうケーキをプレゼントしてくれた。
夜、空港までメトロに乗せてくれた。
ターミナルAはどうやっていくの?
誰もいないコンクリートの壁に囲まれた空間で、夜は長い…みたいな感じで立ってる若い警備員に聞いた。
あの人、ずっと1人で朝までいるのかな?
ターミナルAのどこかで寝なきゃだ。
歩いて寝れそうな空間をさがす。友達からひっきりなしにWhat’s upには大丈夫?って連絡がくる。
大丈夫だよ、あなたが思ってるよりずっと旅なれてるから。
ベンチにバックパックを置いて枕にした。
遠くの床から人の歩いてる音が聞こえてくる。