メスティア 2月20日
チェスの先生は降りない。もっと先の小さな街が故郷なんだって。
じゃあ、ここでお別れだね。
バックパックを背負って夜行列車を降りた。
ズグディディの駅前は真っ暗。
まだ朝の5時だし。
駅前の広場に出たらメスティアまでのバンはすぐみつかった。
タイヤ?を屋根に乗せてクルマは出発。
楽しみだったんだけど、ずっと山のあいだを走ってるから景色はよくなかった。
昨日からなんとなく気持ちがうれしくなくて。
さっさとトルコに行けばよかったのかもって思う。どんよりとした天気のせいかもしれないけど。
メスティアは石造りのきれいな村。
いっしょにきたイギリス人、まずインフォメーションを探すって言ってる。
インフォメーション?最初に探すのは宿なんじゃないの?
私は村を歩いてゲストハウスを探した。
最初にみつけた宿は4000円、高すぎて泊まれない。
1000円ぐらいのとこない?って聞いたら、隣の家まで連れてってくれた。
門の外から大声で誰か呼んでる。
大きな若い女の人が開けてくれた。
1000円でいいよ。
共同シャワーだったけど部屋もめちゃめちゃきれいだった。
奥ではお婆ちゃんが薪で火をおこして料理してた。
だから部屋が暖かいんだ…メスティア、来てよかったかも。
ベリーのいっぱい入ったロシアンティーを作ってくれた。
あ、すごい美味しい。
でも、飲んでると何故か汗がでてくる。すごく美味しくて止まらないけど。
チーズのいっぱい入ったナンも美味しかった。
料理すごく上手だね。
昨日のお昼から何も食べてなかったから、うれしい。
そういったらお皿にいっぱい乗せられた。
女の人はお婆ちゃんの孫だと思ってたけど、家族じゃなくてゲストだって言ってる。
友達と待ち合わせをしてて、ここでずっと待ってるみたい。
何日ぐらい?
一週間かな?
ポーランドからきたんだ。
ワルシャワ行ったことあるよ、戦争でナチスに破壊されて旧い建物と新しいビルが混ざった街だった。
それまで笑ってたけど、そう言ったら堅い顔になった。
それで、いろいろ教えてくれる。
近くにトレッキングにいい道があるよ。
北へ20kmぐらい先の峠。ヒッチハイクで行ける。
私も明日行ってみようかな。
お婆ちゃんとポーランドの女の子と私、3人でだらだらと暖炉の前ですごしてた。
きのうの朝からずっと移動しっぱなしだし、ずっと話してたからかな。
なんだか、すごく疲れてた。
部屋にもどって、シャワーを浴びて洗濯をした。
外を歩く。
石畳の広場を中心に公園やパン屋さん、日用品、小さな食堂が並んでた。
すこし観光地化されてるけど、もともとは素朴な村だったんだろうな。
公園の前でタクシーに声をかけられる。
アッシュガリに行かないか?
メスティアのさらに奥にアッシュガリって小さな村があって、そこへ行く旅人も多いんだって。
横にいた中国人旅行者も誘われてるけど困ってるようにみえた。
そういえばトリビシで会った日本人旅行者もそんなこと言ってた。メスティアの奥にあるアッシュガリはめちゃめちゃ素朴って。
行ってみたいけどメスティアもすごい田舎の村。そんなに違うのかなって思うし、この村もまだ何も見てない。それに雨が降ってた。
でも明日はヒッチハイクでトレッキングに行くよ。
ヒッチハイク?ホントに?
レストランはなんか高そう。
街外れを歩いてると小さなパン屋さんをみつけた。黒パンとウエハースを買う。
ウエハースって中央アジアのどこでも売ってるよね、めちゃめちゃ安いし。
メスティアに合わないようなお洒落なカフェをみつけた。
このお店はコーヒー1杯でもイヤな顔しなくて、きっと村の外から来たんだって思い込む。
メスティアはすこし閉鎖的な気がした。そういう村なのかもしれないけど。
ほかに誰もいないし、外はもう真っ暗。
でも、なんか居心地がよかった。