帰国 5月28日
今日の午後、東京への便にのって2か月の旅は今日でおわり。
ホントは昨日のプラハで旅は最後だと思ってた。
だけど、ワルシャワで飛行機の乗り継ぎが22時間もあったから1泊して街を歩いてみることにした。
話してたら早朝からでも開いてる市場をめぐるのがいいかもって。
ずっとかぶってた帽子は鉄道の窓から身を乗り出したとき風で飛んでった。だから市場で新しい麦わら帽子が欲しかった。旅で使うものは旅先でそろえたいし。
ワルシャワには大きな市場がふたつあって。北にある骨董市Giełda Staroci na Koleと服の市場Targowisko Bakalarska。
そして服の市場はこの宿のすぐとなりだった。
どっちも朝6時から開いてるみたい。
宿に荷物を預けてから、遠くの骨董市に行くことにした。
空港はこのすぐとなりだったから。
赤いトラムに乗った。
ワルシャワの街はナチスに破壊されたあと、市民が街並みを復活させようとしたんだけど、その隙間を縫うように近代ビルも立ち並んでる。
絵本のような雰囲気のプラハと比べられない、落書きとコンクリートで薄汚れたワルシャワの街。
建物の壁には銃弾の痕があった。
財布に28ズロチ(720円)しかない…
何も買わなければ足りるけど。これだと市場で帽子が買えないかも。
地下街で最後の20Euroを両替した。
コーヒーショップでコーヒーを買って怪しい地下街を歩く。
地上に出ると近代高層ビルに負けないぐらい高い共産党ビルがどーんって建ってる。
確か50ズロチ(1300円)で最上階まで登れた気がする。
あとでお金が余ってたら登ってみようかな。
ワルシャワの北西の骨董市までどうやって行けばいいんだろ?
Googlemapをみながら、そっちの方角へバスとトラムを乗り継いで行けば着きそう。
バスに乗って西へ、トラムを2本乗り継いでった。
ここが市場?
あ…、思ってたよりずっとずっと広い。
食器や絵画、コイン、時計、古着、アクセに絵はがき、古いランプ、宝箱。
骨董市、がらくた市、フリマ、いろんな呼び方があるけど、規格品を感じさせないものをみるのは好き。
コーラとパンを食べながら広い会場を歩き回った。
ときどきゴミ箱に捨てなよって言いたくなるのも置いてる。コードとか、壊れた電卓を並べてる人もいて笑っちゃう。
銀のスプーンを交渉して7ズロチ(182円)で買った。
でも欲しかった麦わら帽子はやっぱり見つからなかった。
もう11:00になってた。
服の市場に行かないと飛行機に間に合わない。
トラムを乗り継いで服の市場にむかった。
到着した服の市場から宿も空港もみえた。次に行く場所が見えてて安心する。
帽子を探してどこまでも続く雑踏の市場にまぎれこむ。
敷地に服が積み重なってる。とにかく量が多すぎるし、どれもめちゃめちゃ安かった。シャツ1枚500円ぐらいだし、パンツとか100円しないし、なぜか床屋がいっぱいあるんだね。
ワルシャワの市民はココで服を買ってるのかな。
いいデザインのワンピもあったけど、やっぱり帽子はみつからなかった。ほとんどのお店は黒人や中国人がやってて、黒人は静かで中国人は明るい。
帽子がみつからなかったし、このままだと朝に両替した80ズロチがムダになりそう。
このままポーランド紙幣を持っててもな…Euroにもどしたいな。日本でズロチは両替できないだろうし、
急げば飛行機まにあうかな?
すこし考えてトラムに飛び乗って両替のある中心街までもどった。
急げば飛行機まにあいそうだったし。
朝の両替店をさがして地下街を急ぎ足でうろうろ。
アレ?どこだっけ?広くて殺伐とした地下街をいったりきたり…あせる。20分後なんとか全部のズロチが20Euroになった。
急いでトラムに乗って走って宿に戻った。バックパックを受け取る。
肩のバックパックがすごく重かった、旅はこれでおわりなんだね。
宿のお兄さんは、空港は隣にあるけどバスを2回乗り継がないとターミナルにはたどり着かないっていう。
宿の前からバスを乗り継いで空港へむかった。
たどり着いた東京行きのゲート、いっぱいの日本人の東アジア顔。
東欧の旅ではぜんぜん会わなかったのに。
その時、この人たちには混ざりたくないなって思った。
2か月前、ブルガリアからはじまった旅。
東欧を北へ北へ。
ルーマニア、ハンガリー、クロアチア、オーストリア、そしてチェコを越えて、ポーランドへ。
ブルガリアで迷子になった何処までも広い郊外のバス停。
リラの僧院ですごした寒さで朝まで震えた夜、山小屋でベッドからずっと眺めてた窓のむこうの青空、西日と脱水で死ぬかと思った鉄道、こっそりステップを踏んだ誰もいない夜の古都、黒海沿岸の鮮やかな帽子屋さん、鍵がなくなって国境沿いの街の部屋に閉じ込められたっけ。
国境をこえる鉄道で窓から身を乗り出して叫んだ、安宿で刺されためちゃめちゃに痒い南京虫、輪になって踊り続けたロマニーのお祭り、鉄道で食べ物や飲み物をくれるジプシーの人たち、はじめて生活したルーマニア郊外の団地で飲んだ紅茶はすごくおいしかった。
ブダペストのアパートで創ったフォアグラのソテー、パスポートを盗まれた優しい旅人、凍えながら国境を越える無人のホームからみた朝焼け、深夜の時間が過ぎてくバスターミナルのカフェ、みんな寝てるなかバレないように見てたアドリア海の霧。
パジャマでケーキを取りに行ったウィーンの深夜、いつもバスでかじってたチョコクロワッサンとカマンベールチーズ、宝石箱みたいにきらきらしてるチェコの深夜のトラム、工場労働者のようなビール工場の街のゲストハウスでソーセージを創った。
路地裏の2階の奥にあった古いアトリエ、プラハの夜に路地でずっと聴いてた汚いピアノ弾き、骨董市で買ったシルバーのふるい1本のスプーン。
ぜったいに、ぜったいに、忘れちゃいけない。
これはそのために書かれた日記。