帰国 1月20日
バックパックを背負って部屋を出た。
鍵を返すときは起こしてって言われてたから、早朝だったけど管理人さんの部屋のブザーを押して鍵をわたした。眠そうだったけど笑ってバイバイした。
朝の5時で外はまだ真っ暗。
身体は怠くて風邪はぜんぜん直ってなくて、でもバックパックを背負って歩きだすと歩くことができる。(帰国したらコロナだったんだけども…)
昼間はスクーターがバンバン走って歩きにくかった裏路地も、今は誰もいない。
雨でぬれたアスファルトは街灯で黒光りして少し怖かった。
小さな露店で中華まんを買った。これでバス代を払うと持ち金はちょうどゼロになる。
たぶんオールで遊んでたんだろう数人の人たちが露店の椅子に疲れた感じですわってた。
その人たちも、これから店じまいだって追い出されてた。
真っ暗な道を時間通りに来たバスに乗った。
今日、ハノイ国際空港から飛び立つ飛行機にのって日本に帰る。
旅にでたのはちょうど一年前。
バンコクに降り立った時はその蒸し暑さにびっくりした。
バンコクから南に出る鉄道で自由になれた感じがした。でも、辿り着いたペナンの街が観光地化しててがっかりしたっけ。
トバ湖で宿の長男が毎日マリファナを吸いに来ておもしろかった。ナタをふるってココナッツミルクを作ってくれたけど、あまりおいしくなかった。湖の側にぽつんと建つ小さな教会が好きだったこと。湖をぐるっとスクーターで走ったけど寒さで死ぬかと思った。
ジャカルタの公園からみえる高層ビルの群れ。バニュワンギで4年ぶりに会った友達に二人目の子供ができてたこと。おススメされた国立公園でサバンナをスクーターで走った。土砂降りの雨の中はしってて凍えたけど、大型トラックの後ろは少しだけ暖かったこと。
バリ島の山奥のジャングルの絶景がみれる宿と美味しい食事。
夜道に光が落ちててスマホが落ちてるのかと思って拾おうとしたらホタルが飛んでいったこと。
地元の人が連れて行ってくれた森の中の美味しいレストラン。ペニダ島で退屈だったサイレントデイ。
透明度の高い海とフェリーの錆びた金属から海水があふれてた。ロシア人の子が泣いてて横顔が綺麗だったこと。真夜中にひとりで入ったホテルのプール。スコールの寒さで震える少年たちに雨合羽を買ってあげたこと。スラバヤの高層ホテルからみてた雷。
暑すぎて部屋に水を撒いてたバッタンバン。アランヤプラテートの貯水塔みたいなホテル。バンコクで会った貧乏くさい海兵隊員とボロアパート。周りに何もない白いホテルとたくさん食べたドーナッツ。
カルカッタで会ったとても真面目な日本人のお爺ちゃん。お爺ちゃんが50年ぶりに行ったYMCAがすごい値上がりしてて笑った。カルカッタのレストランの二階で食べたエビカレー。美味しくなかったダージリンのホワイトティー。
ムクティナートでご馳走してくれた農家とプレゼントした1000円札。風と足音しか聴こえないヒマラヤのハイウェイ。お婆ちゃんがアルコール依存症の宿のオーナー。ポカラの宿のベッドからみてた深夜のバスターミナル。ポカラで毎朝食べてたパンケーキ。
すこし天然なルンビーニで会った中国人の子。暑くて扇風機をぶんぶんまわすルンビーニの韓国寺。バスで仲良くなったおしゃべりで煩いインド人。スクーターで迷子になったレーの街。
日本のアイドルが好きなラダックの3姉妹。子供たちとゴンパで仏教の授業をいっしょに受けたこと。川が氾濫してて渡れなかったザンスカールまでの道。レーで毎日たべてた小さな食堂とWifi。
ラホールで会った6年旅を続けてるスペイン人は落ち着きがなかったっけw
友達と眺めてたひっくり返っちゃいそうなフンザの星空。
何度も通って顔見知りになったフンザのレストランとカフェと雑貨屋さん。初めてトラクターに乗せてもらってたパスー。映画のことをずっと話してたパスーのインテリの子。
みんなで踊りあかしたチプーサンの結婚式。シュレサビツで毎日あそんだ村の子供たち。土地が財産って教えてくれた元軍人のお爺ちゃん。アイダとふたりで登ったハイキング。持ってきてた世界中で集めたバングルをぜんぶ村の子供たちにプレゼントしたこと。
世界一危険なシムシャールまでの道。村人たちとみんなで直したつり橋。途中で砂の道がとぎれて進めなくなったボイバー。ガクーチの途中で学者のトラックが乗せてくれたこと、その途中で砂嵐にあったこと。ぶっきらぼうだけど親切だったペシャワールの宿。
まるで戦場みたいなパキスタンとアフガニスタンの国境。夜、ベッドからずっとながめてたカブールの街の灯り。バーミヤンで泊まったチャイハネのやさしい人たち。山岳地帯でバンがスリップして押してたら、びっくりするような満天の星空だったこと。家に泊めてくれたクゥンドゥースの医学生たちとやさしいお父さん。
アフガニスタンとタジキスタンの国境は長い一本の橋で、私しかいなかったこと。
国境の街ジャイフンのヨーロッパみたいな宿とお爺ちゃんのレストラン。ジャイフンで買った服と靴を今も着てること。ただで宿まで連れてってくれたタクシーのドライバー。ドゥシャンベで毎日たべてたケーキ屋さん。コピー屋さんで話したゲームのこと。
ひとりで寂しそうなブハラの目の悪いお爺ちゃん。足が凍りそうになるマイナス16℃のヒヴァまでの路。どこまでも続くウズベキスタンの荒野。深夜ハイウェイを歩いてったタシケントの夜。
毎月旅に出る日本人のバックパッカーの英語がすごい片言だったこと。
再会した村の子供たちと凍った湖でホッケーで遊んだこと。フンザを友達がガイドしてくれたこと。友達のバイクに乗って飛ばしたカラチの海岸線。みんながもどってきた事を喜んでくれたこと。
日本語を話せたゴールデンテンプルで会ったマレーシアと韓国の人。ハノイの下町と美味しかった豆腐料理。今でもたまに連絡を取り合う遠い外国であった人たち。
ぜったいに、ぜったいに忘れちゃいけない。
これはそのために書かれた日記。