ゴア 11月4日

寝台列車っていっても窓にガラスはなくて吹きっさらしだし、小さな枕と薄いシーツだけでカーテンの仕切りもなかった。
南インドのコーチンからゴアまで1000kmの深夜特急、いつ寝たのかはっきりしなかったけど。気付いたら窓の外は明るくなり始めてて、線路の振動が身体を揺らしてる。
目が覚めて、いまインドを鉄道で旅してるんだって気がついてうれしくなった。

停まると周りの客が降りて、おしゃべりしたり、私もいっしょに降りて身体を伸ばしたりする。

 

エアコンなしの寝台はSLといって600ルピー(1ルピー=2円)、エアコンありは黒い窓がはまってて景色が良くないからってコーチンの宿のお兄さんにこっちを勧められた。
隣の誰もいないシートに移って一晩中過ごしてた。
車掌さんが1度みまわりに来てチケットを確認したぐらい、ほかに売り子がミルクティーや食事を売りに来る。

とても静かで穏やかでイメージしてたインドの鉄道とは全然違った。
大きな箒のような物を持ち込んだ小さな子供の兄弟が車掌さんに怒鳴られて降ろされてた、あれはなんだったんだろ?

 

線路に降りてぼんやりしてた。線路はジャングルをずーっとまっすぐ続いてる。
他の客に声をかけられた。iPhoneの音楽を交換しようって、Bluetoothを使って振ればできるらしいんだけど何度やっても上手くいかなかった。

鉄道がトンネルに入ると風が顔に叩きつけられる。ウェットティッシュで顔を拭いたら真っ黒になってた。
昨日キオスクで買った50円のポテトチップス以外は何も食べてなくて、売り子から大きなフライのようなものを30円で2つ買った。よく見ると巨大なトウガラシを衣で揚げたもので少しピリっとしてて、塩味でおいしかった。1つが15cmぐらいあって2つ食べたらおなかいっぱい。
なんて料理なんだろう?
日本でも作れるのかな?
こんな大きなトウガラシは手に入らないかも、だけど。

 

午後に終点のMargao(マドガオン)駅についた。
ゴアは縦に長いアラビア海に面した州。ヒッピーの聖地って言われててゴアトランスが有名だけど。
街の名前かと思ってたけど州の名前だったんだね。
この州には海岸沿いにたくさんのビーチが点在してて、その中でもアンジュナビーチがヒッピー発祥の地らしくて、ゴアトランスのパーティーがビーチで頻繁に行われてるって聞いてた。
そこを目指してるんだけど、ここマドガオン駅の北にあるThivim駅からバスに乗って向かうみたい。

Thivim駅へのチケットを買うと出発は3時間後。
100kmも離れてないのに待ってる時間の方が長いなんて、うーん、どっかで時間を潰さなきゃ。
バックパックをクロークに預けた。
ランチを探すけど駅構内のレストランはあまりおいしそうじゃないし。
外に出るとタクシーに声をかけられる。もうチケット買っちゃったしタクシー高いんでしょ?

イスに座って見渡すとやっぱり欧米人のヒッピーが多い。
それにしてもヒッピーってなんで背が高いんだろ?欧米の老人も多くてびっくり、ゴアって意外と旅しやすいのかもしれないね。

構内に戻ってiPhoneを充電しながらぼんやり、そういえばバックウォータークルーズで一緒だったイギリスのおじいちゃんはここで降りたのかな。
景色がイイわけでもないし、落ち着くわけでもないし、この待ち時間は苦痛だな。

 

 

時間が来て鉄道に乗ったけどThivim行きか分からないし、この車両でイイのかもわからない。
でも北に向かってるみたいだし別にいいかとも思う。
ほかにお客さんがあまりいない。
天井にびっしりとたくさんの扇風機、風だけでがんがんに冷やすぞ。

窓の外の景色がすごくきれいで現実感がまるでない。
地平線のむこうまで続くジャングルと水と青空。
木々が下に見える?なぜ?
長い橋の上を走り続けてるのかな?こんなに長い橋なんてあるの?なんか宙をずっと走ってるみたい。
不思議な景色は1時間ぐらい続いた。

 

Thivim駅を降りると、いきなり牛。あーそういえばここはインドだったっけ、それにしても何もない。バスはどこから出てるんだろ?
駅の外がいきなり土の道とジャングルなんて。

タクシーを断って長い下り坂を降りてくとたくさんのタクシーが停まってる。アンジュナビーチに行くにはマプサまで行ってバスを乗り換えなくちゃいけない。
そのマプサ行きのバスの乗り場を聞くとさらに歩いた先みたい。
しばらく歩くと舗装された道に出る、バス停がどこか分からないけど何人か立ってる場所がきっとそうなんだろね。

 

インドの女の人たちはサリーを着てすらりと立ってる。いっしょに並んでたらバスらしき乗り物が来て、いっしょに乗り込んだ。
マプサ?
って聞くと
マプサって首を横に傾げる。

イスは埋まってて大きなバックパックが小さな車内ですごい迷惑でゴメンね。
車内には音楽が大音量で流れてた。色鮮やかに飾り立てられててインドって感じがする。
ビートルズもこんな風にインドに来たのかな?カルチャーショックを受けたのかな?

 

次で降りよう、家がビーチの近くにあるんだ。
男の人が誘ってくる。
次はアンジュナビーチじゃないよ
少年の車掌さんが教えてくれた。

アンジュナビーチで降りた。あっちがきっと海、だって建物がないから。
ネットで評判の良かったマナーリーゲストハウスへ歩いてった。ココは家族経営のゲストハウスで空いてるのは2人部屋しかなくて400ルピー(800円)だった。

トイレットペーパー25ルピー取られる。
WiFiも2階の本屋の長男に頼んで100ルピー取られたうえに繋がらない。
バスタオルも洗濯料金込みで100ルピー取られる。

なんで評判イイのかわかんない。バストイレ付きで清潔なのはイイけど。

ビーチで週末だけやってる有名なウィークエンドマーケットは欧米人旅行者が使ってたアクセとかを売っててセンスがイイらしいんだよ…
もう夕方なので急ぎ足でビーチへ歩いてった。

ビーチ沿いに小さな露店が数件、ここがウィークエンドマーケット?
聞くとそうだって。うーん、あんまり品物が良くないなーって思う。
ホントにここ?
仕方なく100ルピーでバングルを買う。
隣のお店でもう1度確認すると、ウィークエンドマーケットは少し南のビーチでココは違うって。今から行っても6時に終わるよーだって。
つまりさっきはウソを言われた、もしかしたら間に合ったかもしれないのに。
頭にきてバングルを返してお金を取り返した。

ウィークエンドマーケットの方へ歩いてくと狭い通りで怪しいおじさんに声をかけられる。
マリファナが売ってるそう、MDMA、LSD、エクスタシーとか。
なんでもあるみたい。やっぱりここはゴアなんだなって思う。
奥の部屋につれていかれて、マリファナを買った。

もう空は真っ暗、ウィークエンドマーケットはあきらめた。
小さな薄暗いレストランに入ると日本語で店員に話しかけられる。びっくりしてしまうけど、渋いカッコイイおじさん。
蛍光色のサイケデリックな店内で他のヒッピー達がビールを飲んでる。
ゴアトランスが店内に鳴り響いてる。
ここのインド人は垢抜けてて、すぐ話しかけてくる。

明日はビーチへ行ってみよう。
ブラックライトの下で食べるカレーはテーブル1面赤色でもう何を食べてるのかわかんなくなってた。