上海 10月24日
シャワーを浴びてると、ちいさな窓の外は霧でその向こうに小さなお寺がみえる。ここは周荘という900年前からある水の村。
川にはメダカ、部屋は中国の飾り窓とふかふかの大きなベッド、古い通りに続く灯。絵に描いたような古い中国の風景。
3日前に上海からバスに乗ってきて、次の日には荷物を担いでこの宿にきた。
北京、上海って巨大な都市をさ迷ってて疲れてたのかも。今日は上海に帰って、西か南に向かおうと思ってた。
中国は15日以上の滞在にはビザが必要なんだけど、香港を通過することで滞在期間がキャンセルされるって聞いてる。上海から香港に向かうには内陸へ行くか、海外沿いを南下して行くかなんだけど…
とりあえず上海に着いてから考えようかな。
宿の人、声は通じなかったけど漢字は通じたよね、文字で最後の会話。
歩いてたら迷子になった。こんな小さな村で迷うなんて。
あ、村の入り口にバイクタクシーがいない…朝だから、ターミナルまで歩く?
お土産物屋を抜けて、大きな門を抜けて、橋を渡って歩いてった。
しばらく進むと小さな繁華街へ。ここを左だっけ…バスターミナルの位置がわからなくて不安になる。聞けばイイんだけど英語が通じないかも…通りを渡ってしばらく歩くとあった。
バスターミナルで上海行きのチケットを買って待合室で時間を潰してた。アイスの自動販売機があって買いたい…でも我慢してた。
時間が近づくとバスが乗れるか聞いてた。周荘からは上海以外にもバスが出ているし、電光表示もない小さなバスターミナルだったから不安になる。
時間がきて上海行きのバスに乗車して、1時間30分かけてバスは上海にもどってきた。
香港を目指すけど、内陸ルートはやめて南ルートへ行こうかなって思う。鉄道は広州まで出てた。夜7時16分に上海発って事はここで夜まで待たなきゃいけないし、広州に着くのもきっと明日の夜だよね。
バスが広州まで出てて、出発は昼過ぎみたい。南行きの長距離バスは上海南站(上海南駅)の隣の上海長途汽車客運南站(上海長距離南バスターミナル)から出てる。
あとで調べたら、夜行列車は休憩車両や食堂車もあって快適みたい。あとで失敗したなーと後悔したけど、この時は12時間も待ちたくなかったから。北京から上海まで長距離バス乗ってるんだから、鉄道に挑戦すれば良かったんだけど。
地下鉄はやっぱり混んでて、バックパックが大きくて降りるドアがどっち側か気になる。う、反対側のドア、人を押しのけてぐいぐいとドアまで進む。
すいません…
地下鉄を降りてバスターミナルまで長い地下街を歩いてく、けっこうあるね、隣接だったんじゃないの?
広州までのチケットを7000円ぐらいで買った。おじさんにめちゃめちゃ遠いよとびっくりされたけど。
窓の外見ながら音楽聴くの好きだから、って言わないで知ってますって言って笑った。
2時間の待ち時間だし朝から何も食べてないし。できれば中華で安くておいしいの。外を見渡してもちょうどイイ感じのお店がなかった。タクシーに声かけられる、ううん、今からバスだよ。
バスターミナルの2階にカフェがあって、サンドイッチとアイスティーを食べてた。アイスティーは最初ホットが出てきて、まぁいっかって思ってたら、作り直してくれた。このカフェはパンの種類が豊富でおいしい。
カフェを出てターミナルを歩いた。乾電池が欲しいけど見つからない、これから24時間のバスdiPhoneの充電が切れないようにしたかったから。
5元で充電しながら指定されたゲートで待ってた。時間が近づいても電光表示に広州の文字が出てこない、確認したらまだだって。
来たよって係員に言われて乗り込むと案の定ボロボロ、夜行バスってなんでボロボロなんだろう?
でも窓際に座れた。バックパックは1番後ろの空いてる席に積まされた。めちゃめちゃ重い荷物の人を手伝った。こんな安いバスにサービス料なんて含まれてないもんね、客と店員は対等なんだよね。
後ろの席には黒人の女性、私以外にも女の人がけっこう乗ってる。バスは走り出して上海の郊外へ、いつの間にか寝てた。
夜中にバスは暗くさびれたパーキングへ入っていく。
蛍光灯の切れた薄暗い休憩所、35元(700円)という大金を払ってチケットを買って食堂のおばさんに渡す。
おばさんは銀のお盆にべちゃっべちゃっと料理を叩きつける…
北京からのパーキングの囚人飯を思い出した。ここは美味しいといいんだけど…
近くのテーブルに座って食べると、口から出したくなるマズさ。
うぶ…
さらに輪をかけてマズイよ。周りの人たちはカップラーメン買って食べてる…自分の身体で人体実験してしまった。
見せしめとしてこの物体はテーブルにすべて残した。
トイレの建物は遠くからも赤い明かりがホラーっぽい…肉の解体作業とか連想させる。
入ってみると真ん中に1本の長いV字溝があるだけ。
板で前後を仕切ってるけど、これ丸見えだよ…水も流れてないから、その…置きっ放しだし…
お、恐ろしい…
世界の公衆トイレはいろいろ見てきたけど文句なしに1番をあげる。
こんなホラーなパーキングに置き去りにされたら絶望感すごくて笑っちゃうだろうね。
他の人たちと黙って真っ暗な駐車場を見て心地よい脱力を感じながら、買ったポテトを無意識にぽりぽりとかじってた。