香港 10月25日

流れるバスの外にはヤシの木が並んでて、もう南国なんだなって思う。
バスが止まった休憩所で20円の饅頭を食べた。長袖が暑いよ…

上海から24時間かけて広州まで、ずっと海岸沿いだったハズなのに海は見えなかったな…

 

他の乗客が降りたから私も降りた。
暑いな…
夕方の4時、広州のバスターミナルの黒い大理石の上でフリースをバックパックに押し込んだ。

ここから香港は目に見える海の向こうにあって、国境を越えていく。地球の歩き方を広げて香港までのルートを調べた。中国は15日以上の滞在にはビザが必要で、滞在期間をリセットするために香港に行かなきゃいけなかった。

バスターミナルを出ると高速道路の下にヤシの木が並んでた。テキトーに歩けば地下鉄に乗れるかもしれないし。しばらく高架に沿って歩いて、バイクタクシーに少し離れた地下鉄まで運んでもらう。後でわかったんだけど、バスターミナルにちゃんと地下鉄はあったんだけど…

 

地下鉄に乗って巨大な広州駅に着いた。きょろきょろしてたら駅前広場で痩せたおじさんに声をかけられる。香港へのバスターミナルに行きたいんだけど場所がわからなくて、優しくていろいろ教えてくれる。あっちとか言うんだけどバスターミナルぽくないし…
香港行き鉄道MTRは広州駅じゃなくて广州东站(広州東駅)みたい。おじさんはタクシーで行きなよって言うけどタクシー代100元(2000円)はとても払えなかった。

また地下鉄に乗り直して広州東駅へ。
広州東駅では迷子になってた。無人のコンクリートの建物の階段を上ったり降りたり…人が少なくて…変だな。
入り口が別だっただけ。2階のMTRのカウンターでは香港行きが150元(3000円)で売ってる…
あれ、財布に150元はないんだけど…
どっかで両替しなきゃ
外に出てうろうろ…う~、開いてる銀行が見つからない。やばい、このままだと。
そして太陽は沈んでしまった。

このままじゃ広州で宿を探さなきゃいけないよ…
中国は両替が街中にない。どうしようもなくて近くのATMで生まれて初めてキャッシングしてみた。
カードを何度も入れて画面をタッチするけどやり方がわかんない。
そういえば…大きなホテルだと確か両替してくれるんだっけ?
近くの高そうなホテルに飛び込んだら100ドルを両替してもらえた。
よかった…そういえば駅には要らなくなったっぽいチケットを400元で売ろうとしてる人がいたけど元値(150元)より高いのに誰が買うんだろうね?

 

広州東駅に走って戻って列に並んで香港行きチケットをやっと購入できた。
売店でスナックとミネラルウォーターを買ってイスに座ってぱりぱり食べてた。周りは欧米人が多いね。時間がきてイミグレを通過、これで中国出国のスタンプが押されてビザの心配もなくなった。

MTRが来るまでトイレへ行ったり座ってた。MTRは指定席なのに立って並んでる人が多いのなんでだろ?ホームに来たMTRは音のしないきれいな鉄道だったけど、進行方向と逆の席は窓からの夜景を楽しませなかった。

2時間で香港の紅磡駅(ハム駅)についたときは夜の11時を過ぎてて外は真っ暗。
ここが香港なの…
子供のころから知ってる、それは映画の街で、ネオンの街だった。香港を強く意識しなくなったのはいつからだったっけ。
いつの間にかその香港に来てたんだね。

宿は重慶大厦(チョンキンマンション)に決めてた。重慶大厦…ただのマンションじゃなくて、九龍城の後継者とか言われてて、英語や小説の舞台にもなってる。
宿がめちゃめちゃ高い香港の中でサイコーの立地なのに安宿が集まってて治安が悪いみたい。
写真でみてもカオス感がすごい。

駅を出るとタクシー乗り場は長蛇の列、少し離れたところからバスが出てるんだけど、どれに乗ればイイかわからなかった。歩いても行けそうだけど深夜だし、行き方もわからないし。
乗ろうとしたタクシーにはあっちに並べと言われる。香港はタクシーの色で走れる地域とタクシー乗り場が決まってるみたい。
長蛇の列に並んでタクシーに乗った。
物価が高いって聞いてたけどすぐ近くで降ろされて400円ほどでほっとした。

降りて灯りの落ちたネイザンロード周辺をうろうろ。
重慶大厦どこ?
暗がりから出てきたインド人ぽい人に道を聞くとすぐ裏手って日本語で返してきてびっくり。しばらく日本に住んでいて今は重慶大厦に住んでるんだって。

夜中で疲れ果ててた…のに久しぶりの日本語ですごいホッとした。
みてすぐわかった、重慶大厦の前はそこだけ人がいっぱいだったから。インド人、アフリカ人、欧米人、すごい雑然としてる、バンコクのカオサン通りみたいだね。

大きな入り口に入ると次々とインド人に囲まれて宿を紹介される、人混み、降りたシャッター、またたく蛍光灯、いっせいにこっちを見る目…うわぁ治安悪そぅ…カオスぷりすごい。
ドラゴンインって宿に決めてるよ
高いよって300HKD(4500円)だって
それを信じてなかったから歩いて見て回るけど、行き方がわからない…
この巨大なマンション、エレベーターが4基あってそれぞれ別々の練に繋がってるんだって。それぞれの練の各階に3つぐらいゲストハウスが入っていて、その入り口もよくわからない…
えー…どのドアが入り口なの?

ぐちゃぐちゃに入り組んだ建物内部、歩くのも24時過ぎてて疲れてた。
あきらめてインド人に200HKD(3000円)で窓があるというゲストハウスに連れてってもらった。
A練の15階にある京都旅館
もちろん京都とは何もカンケーないし日本人もいないし、なにより裸の腰にバスタオルを巻いただけのネパール人が出てきて心臓が止まるかと思った。

シングルは埋まってたのでダブルをシングルの料金で泊まらせてくれた。でも明日に部屋を移動することになったけど…

なんでだろ、このビルはほっとする。安心する。
重慶大厦の雑多な人間臭さと無国籍さにほっとしてる。
どこにも居場所なんてなかった自分はほっとしてた。

やっとベッドで寝れるね…おとといの朝は周荘の村で目を覚ましたのに。
そこから上海を越えて、広州を越えて香港へ。
シャワーを浴びて、インドカレーをインド人に混ざって食べた。
暗くなった夜の香港をすこしだけ歩いた。