帰国 11月28日

今日はアジア放浪の最後の日。
午後は飛行機、きっと明日は東京にいる。

朝、近くのカフェで最後の朝食を食べた。

旅で心残りだったことがひとつ。
インドでアーユルヴェーダができなかったこと。額に油を垂らされ続けるトリートメントがあって、どんな気分なんだろ?って思ってた。
カトマンズにもアーユルヴェーダはあるみたい。

すこし悩んだけど、宿をでて北の郊外にあるというサロンまで自転車ではしった。

1時間後、汗だくになりながらサロンをさがして走り続けてた。
うー、ずっと上り坂だったなんて…
あれ?住所だとここだよね?つぶれたのかな?

サロンはみつからなかった。もし見つかってももう汗だくだった。帰りもきっと自転車で埃だらけになる。トリートメントも意味なさそう。
あきらめて帰った。
帰りは下り坂。自転車はびゅんびゅんスピードをだしてく。

カトマンズの路地。
自転車を返しに行ったけど、いつものおじさんがいない。パスポート預けてるし…もうすぐフライトなんだけどな。きょう帰国だって言ったのに。
電話で呼んでしばらく待ってた。20分たってやってきたおじさん。パスポートを返してもらった。
うん、またね。
あ、自転車いっこ壊しちゃったけどゴメンね。

両替所で少しルピーを残して残りを中国元に替えた。
宿に戻ったら空港までのタクシーを用意してくれる。1000ルピーだった。
シャワーを浴びて汗をおとしてタクシーに乗った。
運転手が700ルピーしかもらってないって宿に怒ってた。

カトマンズのトリブバン空港はレンガ造りで小さい。
目の前にとまってる飛行機。すごく近くてコクピットが大きな顔みたい。
ミネラルウォーターを飲んだ。
ばいばいネパール。

 

巨大な昆明空港についたのは夜の11時。
東京行きの便は早朝で朝までヒマだった。聞いたらナイトマーケットがあるんだって。
行く?
けど、大きなバックパックを背負って歩くのはヤダな。
だから、いつもみたいに空港泊することにした。

空港を歩いてるとたくさんの宿の客引きに声をかけられる。
これから空港で寝るんだよ
冗談でしょ?ってみんな大笑いする。
ううん、ホントだよ
ねえ、みんな明るい人たちだね。

巨大な深夜の空港をあるく、どこにも居場所がみつけられない。
つらくなってレストランに入った。1番安いラーメンは700円もした。コインが1枚ポケットに残った。
これが最後の食事なのかな?きっと市内だったら安くておいしい中華が食べれたんだろうけど…ココは空港だから高いね。

 

寝る場所を探して空港内をうろうろ。
人のいない夜の空港を歩いてると、誰もいない映画のセットにいるような感じ。
昆明空港はどこまでも広くて、がらんとしてた。
2階の暗がり、そこは閉店後のカフェでソファがならんでた。ここなら寝れるかも。
バックパックを枕にする。フリースを取り出して身体にかける。
気がつくと周りには似たような人たちがちらほら。
日本人っぽい女子ももうひとりいて安心する。雑貨の買い出しなのかな?大きなトランクをふたつも持ってた。すごい旅に慣れてる感じ。

夜の昆明空港、目を閉じてると遠くから異国の声が響いてくる。
ドームの真っ白い天井を眺めた、ひとりなんだって思った。

朝、ポケットにあった最後のコインでコーラを飲んだ。

中国を北京から南へ、香港からインドを越えてネパールへ。
2ヶ月前、日本を出た私は広大な北京で迷子になってて、宿をさがしてうろうろしてた。

深夜のマックでぼんやりしてたら雪がふってきて、芸術地区の時間が停まってたカフェ、上海で迷子になりながら見上げたぎらぎらのネオン。
700年前の村で朝霧の中飲んだ飲茶、香港でずっとみてた高層ビルと青空と飛行機、殺風景なチョンキンマンションの窓際に植物を置いた、コーチンで見た静かなアラビア海は緑色でSFみたいで、インドの鉄道で顔が真っ黒になったっけ。
スクーターで走り続けたゴア、ハンピで会ったバカみたいにゆるい人たち、朝霧のポカラでもらった約束されたプレゼント、凍えるベッドから眺めた生物のいないヒマラヤの夜空、自転車で走り続けたカトマンズ盆地。

ぜったいに、ぜったいに、忘れちゃいけない。
これはそのために書かれた日記。