ベイネウ 1月22日
ウズベキスタンに入国するときは所持金の証明書を2枚、同じものを書く。
1枚を入国のときに税関に出して、もう1枚は出国するときまでずっと持ってなきゃいけない。
なのに私は1枚しか書いてなくて、その1枚も入国のときに出しちゃってたから持ってなかった。
出国のときに提出する証明書がなかった。
ネットをみたら、出国のときに所持金の証明書がないとぜんぶ所持金を没収されるとか書いてある。
このことがウズベキスタンにいるあいだ、ずっと心配で心配で。
いろいろ対抗策も調べてたんだけと、所持金がなければ没収されることもないハズって思った。
スニーカーの裏に米ドル紙幣を隠してみたり、帽子の裏に隠したり。
どれも簡単に見つかりそう…
いろいろ試してベルトの裏の縫い目をカッターで切って生地の裏に紙幣を押し込んだ。
早朝、太陽が登りきらない紫色の朝焼け。
宿を出て目の前にあるクングラードの駅へ入った。
今日は鉄道で500km先のウズベキスタンの国境を越える日。
長旅になるね、ホームでパンとコーラを買った。
やってきた鉄道は錆びた鉄の塊、あれれ、最新のが来ると思ったんだけど…
席はなぜか寝台。まあいっか。
寝台には男のコがひとりいて、カザフスタンに勉強しにいくって言ってた。
話してるとお腹減ってるでしょってタッパーに入れたご飯を渡される。さっきまでしゃぶってたスプーンも、ほらっ、て渡される。
すごい親切だけど断った。
かわりに、いっしょに燻製の魚を買った。ウズベキスタンの行商ではよく見てたんだけど食べるのは始めて。
お互いのパスポートをみせあったりしてると、物売りのおばさんたちが来て座っておしゃべりする。
だんだんと周りに他の車両から人が集まってきて、お互い写真を撮ったりする。
みんな明るい。
最後にはむこうの車両にフランス人がいるから、いっしょに行こうよって誘われる。
いーよーココでー!すこししゃべるの疲れたし。
夕方、ウズベキスタンのイミグレについた。鉄道からは降りなくていいみたい。
重そうな鉄の銃を持った国境警備隊が通路を通ってく。なにかトラブルが起きたりして、ってわくわくしてしまう。
麻薬犬?が横にきたからアタマ撫でてたら懐いてしまった。いつまでもわんちゃが私から離れなくて、警備隊が犬に怒鳴ってた。
緊張しながら所持金の証明書ないことを伝える。
別にって感じで綺麗な女の人が笑顔でスタンプ押してくれた。
よかった…
ただ、他の車両にいたフランス人は車両から降ろされて連れて行かれてた。
なんだろう?
カザフスタンのイミグレも問題なく越えて、鉄道はカザフスタンの大地を走ってく。
もう外は真っ暗で何もみえなくなってた。
ベイネウの街に着いたときはもう深夜。
どうしよう?宿ちかくにあるかな?ぜんぜん言葉が通じない。
駅は深夜なのにたくさんの人たちであふれてる。
鉄道から降りたり乗ったり、すごい活気でみんな忙しそうで飲み込まれそうになる。
カザフスタンに入ると人もぶっきらぼうになった気がする。
うろうろしてもなんにもならなかった。
もしかしてベイネウに泊まらずに夜行列車でアクタウに行けるかも。
聞いてみたらアクタウ行きの鉄道は20分後に出るみたい。チケットも買えた。
すごいタイミングイイなって思う。
鉄道に乗ったら木の寝台で、古いヨーロッパみたい。
4人で一部屋。
ひとりおじいちゃんがすごく丁寧にベッドメイキングして、服も綺麗に畳んでて、ジャケットも掛けてた。
なんかイイなって思った。
外は真っ暗で、ときどきオレンジの街灯が窓の外を走った。
ずーっと鉄道に乗ってた一日、いつの間にか寝てた。