ヴァルザネフ 2月1日

イスファハンから東に100kmのとこに小さな砂漠の村があって、
村の名前はヴァルザネフ(Varzaneh)。
地球の歩き方にも載ってない。

イスファハン郊外にあるJターミナルから、ヴァルザネフ行きのバスが出てるみたい。
朝、宿の近くからテキトーなバスに乗った。
ドライバーが行き先を聞いてくる、Jターミナルだよって言うと小さなバス停で降ろされた。ドライバーもいっしょに降りてくる。
ドライバーのおじさん、なにか周りの人にお願いしてる。たぶん、この人を誰かJターミナルに連れてってくれって言ってるんだ。
バス代を払おうとすると、イイからって手を降ってバスに乗ってどっか行っちゃった。

 

そこにいた青年が別のバスに乗せて連れてってくれる。
そこでもやっぱりバス代は請求されなかった。
Jターミナルまで連れてってくれて、これから学校にいくからって笑って別れた。

ターミナルはのどかな公園みたい。
そんななか、東に向かうバスはめちゃめちゃボロくて迫力があった。
出発まで時間があったから、外のベンチでぼんやりと待って他の人たちとおしゃべりしてた。

 

バスが街をでると、すぐ砂漠地帯を走る道路になった。
走ってるとレンガの廃墟みたいなのが時々みえた。「カラ」といって古い街の残骸みたい。物によっては紀元前のものもあるとか。
それがごろごろと打ち捨てられてた。看板が立てかけられてたりする。
古代メソポタミアから続く世界でいちばん古い国イラン、そこでは中途半端に古い廃墟が価値があるとは限らない、なるほどって思う。

ショルダーバッグをみたらパスポートがなかった。
チェックアウトのときホテルの受付から返してもらってなかった…
となりの男ふたりがいっしょにランチ食べようって誘ってきてたけど、一瞬で断る。それどころじゃなくなってしまった。
ヴァルザネフに着いたら宿の人に相談しよう…早くついてほしい…

 

ヴァルザネフは砂漠にある数百mしかない小さな村。
周りをぐるーっと道路が一周してる。
歩いてゲストハウスを探した。
テキトーに歩いて周りの人に聞いて歩く。教えられた小さな家の入り口を通った。

あ、すごい。めちゃめちゃきれい…
砂漠の伝統的な民家は木の生えた中庭を中心にガラス窓の部屋が並んでた。

誰もいないのかなと思ってたら奥からおじいちゃんがよろよろ出できた。
私を見つたら、キッチンからチャイとお菓子を持ってきてくれる。
ありがとうね、おじいちゃん。

それにしてもきれいなゲストハウス。
おじいちゃんは英語が通じなかったから、ホストが帰ってくるのを待った。

 

女性がバックパックを背負ってくる。いままで砂漠に行ってたんだって。
さ、砂漠?!えー、すごい!行きたい!
チャイを飲みながらふたりで砂漠の話をした。

1時間後、やっとしっかりした人がきた。
パスポートを忘れてきたことを伝えると問題ないって言ってる。明日イスファハンからくるバスにパスポートを運んでもらうって。
日本の感覚だと、それでだいじょうぶなのかな?って思う。
それでも中央アジアを旅してると日本では感じない、強い横の繋がりも感じてきていた。
商売でない信頼関係みたいなのがあって、相互扶助の文化が強いって読んだ。

困ってる人を助けたら、その人が他の人を助けて、自分もいつか誰かに助けられる。

自己責任と突き放して
助けることから逃げてる日本にいちばん欠けている文化だと思う。

中庭でチャイを飲んでるとオーストラリア人から夜に砂漠にいこーよって誘われた。
夜に砂漠?
宿の人がクルマで連れてってくれるみたい。なんと砂漠にテントを張ってバーベキューをしながら過ごすんだって。
ぜったいに行く!

夕方に小さなクルマに乗った。
すこし走ってクルマは砂漠に突入してく。丘をがんがん登ってくとその先は地面が硬くなってた。

 

テントを張って荷物を放り込んだ。
ドライバーのおじさんが薪で火をおこす。
周りの枯れ枝を集めて火にくべた。
スイカを切って食べた。
串焼きのマトンを3人で食べた。

食べ終わるとおじさんはクルマで村に帰ってった。と、思ったら戻ってきた。
なんとクルマが砂漠の砂にスタックしてる…
オーストラリア人とクルマを押す、ふたりで笑った。

 

夜、砂の丘を登った。
そのむこうは何処までも続く砂漠。砂の世界。丘に座ってみてると何処かから音楽が聴こえてくる。
周りに何もないのに?
ものすごい遠いとこから、風にのって聴こえてきてる…

満月で期待してた星は見えなかったけど、枯れ木のシルエットが砂に写るほどの眩しい月夜ってのも初めて。
月を見上げると眩しくて、まるでライトみたい。

その夜はテントの外に絨毯をひいて寝た。
雨なんか降らないよね。
でも、時々すごい寒くて目が覚める。目を開けるとそこには眩しい満月。