イスタンブール 2月26日

石の階段を上がったり下がったり。
お腹がへってた。どっかに食堂があるはずなんだけど…
奥の部屋に入るとだれもいない。棚の上にきゅうりとかトマトが乗ったお皿がならんでる。
まだ準備してるのかも。
壁にはトルコの工芸品がいっぱい飾ってある。
このガラスの青い目玉?なんだろう?じっとお前を見てるってこと?

ドアが開いておじいちゃんとお婆ちゃんが入ってきた。心臓とまる、あわてて挨拶する。
ふたりは笑って食事の準備を始めた。

部屋にもどった。
岩をくりぬかれた部屋には大きなベッドが2つ。
10畳くらいありそうな私にはもったいないぐらいのシャワールーム、その茶色の部屋にはシャワーノズルが2つもあった。
シャワーを浴びてバックパックを預けて宿を出た。

 

道端にいる両替マシーン、100ドル札を飲み込んでから動いてくれない。横のおじさんがお札の皺を伸ばして入れるんだよって言ってる。
ん、ん?ダメだよ
何度やっても、べろべろーって100ドル札がでてくる。

免許がないならスクーターは貸せない、だって。
あ、そうだよね…あ、ちょっと走ってみたかっただけだから。
坂道をとぼとぼ歩いてたら、ヒマそうなおじさんが話しかけてきた。アメリカンな感じする。バンダナ巻いてるから。
ココで産まれて、ずっとココに住んでるんだって。
そっか、岩の世界で生まれたんだね。

スクーターに乗せて丘の上まで連れてってくれた。
太陽のむこう、奇岩がどこまでも続いてる。

ココから街まで歩いてみようかな?
たいへんだよ?やってる人を見たことないよ
じゃあ、やってみようかな

丘を滑らないように降りてった。スニーカーが乾いた土にまみれて茶色になる。
谷底に降りた。
見上げたらおじさんが手をふってきた。私も手をふった。

まわりは奇岩が並んでて、それがなんかアフリカの植物みたい。
バオバブだっけ?
サバンナを探索してるよーな。もう、サバンナでいいよね。

こんな土地に小さな家があった。住んでる人がいるんだ…
時々は迷子になりながらサバンナを歩いて2時間後、街の端に辿りついた。
といっても、目の前にあるのは民家の屋根だけど。

どうしよう…行き止まり。
ま、いっか
屋根の上を落ちないように渡ってく。屋根から塀の上に移ってとなりの屋根へ移ってく。
ズボンでよかったけど、でも、これじゃ泥棒じゃない?人がみてなくてよかった。
庭にこっそり飛び降りて、音をたてないよーに門を開けて道に出た。

旅してるとフィジカルな方法を選ぶよね。

 

バックパックを取って昨日のお店へ行った。夜に会う約束をしてたから。
彼がチャイを淹れてくれる。

サフランボルに行きなよ、アンカラから行けるから。
そんな寒がりなのに北が好きなの?
カッパドキアが寒いんだよ

日本で会う約束をして別れた。

カッパドキアをバスで離れる。観光地って感じで最初は好きじゃなかったけど、まわりの観光客とすこし違う生活ができたかもしれない。

鉄道駅で降ろして欲しかったんだけど、バスターミナルに降ろされた。

アンカラまでのバスを待ってると私の帽子が気になるみたいで、いろんな人がかぶろうとする。
ただの帽子だよ?
きっと、みんなからかってるんだろうけど。

ネオンで眩しいオフィスビル群、トルコの首都アンカラに着いたのは夜。
ネットカフェを見つけてイスタンブールまでの鉄道を調べた。
ねえ、サフランボルに行くんじゃなかったの?
イスタンブールに何を期待しているの?
旅のおわり?

鉄道駅まで行ったけど、イスタンブールまでの鉄道はもうなかった。
ガラス張りで新しい駅はホテルより快適そう。
ココで寝ていい?
ダメだって、夜になると閉まるから。

ターミナルまで戻ろうとメトロに乗ろうとしたら男のコが声をかけてくる。チケットを買って道案内してくれた。
学校から帰るの?もう夜遅いよ?あとね、ありがとう。

 

イスタンブールまでの深夜バス。
となりのトルコの人は明日インドに行くんだって。学校の先生してるって。

モーターサイクル・ダイアリーズ知ってる?
ゲバラの南米縦断だよね
イントゥザワイルドは?
うん、最期死んでた
2つとも僕のバイブルなんだ

これ見てよ

腕をめくってタトゥーをみせてくれる。
血なまぐさい心臓のタトゥー。
All blood is red, All heart is left.

…差別をしないってこと?
僕はコミュニストなんだ

周りが寝静まった深夜のバス。
つい声がでて音をたてないように、しーってされながら。
iPhoneの輝く画面でずっと話してた。

明け方のボスポラス海峡、時間がとまるようなハグをした。
彼はインドへ。
私はヨーロッパへ。
きっと、また、どこかで会えるね。

海のむこうにヨーロッパがみえた。