マルセイユ 2月4日
真っ暗な中、部屋で音をたてないように荷物をまとめた。
まだ朝の5時30分。
部屋のふたりは寝てた。
イタリア人のアーティストさんに別れの挨拶ができないのが心残りだったけども…
小さなホームでトラムを待つ。
街にはまだ誰もいないけど、このホームにだけすこし人がいた。
みんな朝早いから無言。
旅の空気を感じる。
イタリアは観光客ばっかりで旅情を感じなかったけど、今初めて感じた気がする。
フィレンツェからバスで北へ。
はじめ窓の外は真っ暗な街並みだったけども、いつのまにか冬のイタリアの山景色になった。
すこしずつ明るくなってきた。
あ…、見上げたら空がみえる。このバスは天井がガラスなんだ…
ジェノバでバスを降りた。
カモメが飛んでる。港町なんだね、観光客もいなさそう。歩いてみたくなった。
イタリアは冬でも蚊がいて、刺された手が腫れてた。
めちゃめちゃかゆいし…
日本から持ってきた塗り薬は役に立たなくて、パキスタンで買ったクスリが効果抜群だったんだけど。チューブが破れたから捨ててた。捨てなきゃよかった…
イタリアの薬局で10euroで買ったクスリ、役に立つかな?
1200円って高いんだけども…
ローカルな小さくて小汚いカフェ。
オリーブの実がいっぱい乗ってる1euroのパンを買った。奥では老人がスロットマシーンをジャラジャラ回してる。
窓の近くの席に座ってパンをかじった。
うー、やっぱりオリーブめちゃめちゃおいしい…日本で食べるオリーブはあんなに不味いのに。
頭の良さそうな老人に話しかけられた。
華僑なのかしら?日本人のようにもみえる。
日本に行ったことがあるよって言われた。室蘭とか神戸とか…神戸がよかったって。
中国からきたの?
エクアドルだよ
エクアドル…?南米だよね。
インディオの人たちには日本人ぽい顔した人がいる。
北のエスキモーから流れてきた人たちがアイヌになったみたいに。エスキモーはアラスカを越えて、北米大陸を南下して、南米に到達したのかもしれない。
このまえメキシコからコロンビアまでローカルバスで行ったよ
サルバトルとかホンジュラスは危ないよ
でも、楽しかったよ。おじいちゃんも4ヶ国も生きてきたんだね
国を離れて生活をするということ。
移民によく会うンだけれども、みんなとても親切だった。
握手をしてばいばいする。
国境を越えてマルセイユに着いたときは真っ暗だった。
外は風がめちゃめちゃ吹いてて凍えそうだった。
急いで駅に駆け込んだ。
メトロは1.8euroもした。日本より物価の高いフランスにきたんだって実感。
そのマルセイユで一番安い宿では黒人がテキトーに受付してた。
ロッカー、ぜんぶ壊れてるし…
なんか床に使用済みの注射器とか落ちてそうだけど…
シャワーを浴びてベッドに潜りこむ。
つかれたけども今日はとてもいい日だった気がする。