ラホール 7月2日

暗闇でスマホの明かりをつける。
早朝、音を立てないようにバックパックをまとめた。
誰も起こさないように、あいさつしたくなかったから。

ここはゴールデンテンプルっていうシーク教の総本山の宿舎で、その寺院は白く壮麗で、インド北西部のアムリトサルって街にあって、ベッドも食事もなんでも無料で…

でも、二日でもうお腹いっぱいだった。

部屋には数人のバックパッカーがいて、
いちばん奥のベッドはアメリカ人で、彼はなぜかシーク教徒で、いつもどこか疲れてる感じがして…なんとなく行く場所がないのかなって思う。
向こうの小部屋に日本人がいて、いつも無言で逃げるように部屋に入ってた。彼らの部屋からは話し声も聞こえない。
あとはイギリス人がいて、彼らはどこにでもいるバックパッカーらしく明るかった。

部屋を出る時、うしろを見たらアメリカ人が起きてた。
手をふると寂しそうに笑って振り返してた。

 

インド人にパキスタンに行くと言うとイヤな顔をしてウソをついてくる。
国境は閉まってるよ、とか、バスはないよ、とか。
自信満々にウソをつく。彼らの言葉は無視してバスターミナルまで歩いてく。
アムリトサルから国境の街アタリまでは20kmくらい。そこからリキシャで2km走ると国境のワガボーダーに着いた。
国境はまだ開いてなくて、カフェで朝ごはんを食べて待ってた。

やっとインドから離れられる。
ほっとする。
彼らの自信満々のウソと自信満々のインド訛りの英語には、もううんざりしてた。

インドのイミグレも、パキスタンのイミグレも簡単におわった。
国境を越えると乗り合いタクシーに声をかけられた。
ラホールまで1000Pkr、しかも乗り合い…かなり高い気がする。

どうしていいかわからなくて
なんとなく椅子にすわってチャイを飲んでたら、両替商も近づいてきた。なんか乗り合いタクシーも両替商もぼったくりな感じ。

彼らは私の100$札をみて目の色を変えた。それがおもしろかった。ドルは今高いものね。だけどこれは渡さない。

ぼーっとチャイを飲みながら待ってると、ひとりの欧米人が同じように国境を越えてきた。
彼は足早でやってきて、目の前で両替をしてる。
バックパックが異常に小さくて動きに落ち着きがない。

なんとなく気になってどこに行くか聞いてみた。
この先の大通りからトゥクトゥクでラホールに向かうみたい。
私はあわててバックパックを担いで彼についていった。タクシーを使わないってことは、きっと彼はくわしいんだ…

ラホールまでは乗り合いのトゥクトゥクでたった50Pkrだった。
トゥクトゥクのせまい座席で彼は6年旅してるって言った。え?そのバックパックの小ささで?
びっくり。
インドとパキスタンも行ったり来たりしてるって。

ラホールに着いたらメトロに乗り換えた。安くて有名なバックパッカーズというホステルまで行く。
とにかく彼は足が速くて、ついていくのが大変。

なんか見覚えのある通り。
そういえば4年前にラホールに来たときは、となりのインターネットインって安宿に泊まってたんだっけ…
そう言ったら、インターネットインは今はダメだって言う。
何がダメなのかは分かんなかったけど。

 

ここのビリヤーニがおいしいよ
ここのラッシーが安くておいしいよ
ここの銀行でおろしていくといいよ

夜、いっしょに食事に行くと歩きながら色々おしえてくれる。
ネオンのかがやく繁華街。
足が速くて、水たまりをよけながら慌ててついてった。