レー 6月26日
ラマユールは月の谷っていわれてる。
ラダックは標高3500mを越える大地で草木はほとんどなくて、黄色い荒地と青空がひろがってる。
ラマユールはそんなラダックの谷間にある。その言葉の響きも円と弧を描いてるような感じがして満月と三日月を連想する。
部屋をでて階段をのぼってテラスにあがると目の前の崖の頂に大きなゴンパがみえた。
無数の手作りの小さなお家が崖に張り付いてる。
ぼーっと渓谷をながめてると、大きなバイクに乗ったインド人のカップルがテラスにやってきた。そのまま女子の方がふらふらと地面に倒れこんだ。
高山病かなって思う。
標高3500mを越えるラダックでは高山病で死ぬ人もいるとか。
ケイロンで泊った宿には高山病で死んだおじさんが連れ込まれてた。
家族でラダックに旅行に来て、その父親がレーで高山病で亡くなったみたい。
レーからケイロンまで一日かけて死体を降ろしてきて、明日はデリーまで死体を降ろして、病院で解剖することになるだろうって宿の人は言ってた。
その女子の人はよろよろと立ち上がってテラスの椅子に座った。
宿をでてスクーターにバックパックを積む。
今日はレーまでもどってスクーターを返さなきゃいけなかった。距離にしたら120kmほど、4時間とか5時間くらいかかりそう。
宿をでて走り出したときに、宿のお姉さんが歩いてきてるのがみえた。
すごく安く泊まらせてくれて、ありがとうね。
ラマユールの村の外れに小さなレストランがあった。
朝ごはんにチャパティとオムレツをたべて、コーヒーを飲んでしばらくぼーっとしてた。
お金を払うとき値段を誤魔化されたから、それは高すぎだよ?って訂正して払った。
雨が降り始める。やばいなって思った。
すこし我慢して走ってたけど寒さでガタガタ震えてきた。レインコートを着た。バリで買っておいた100円のレインコートは大活躍してる。
崖下は300mはありそう。遠くには6000mの山脈。大きなワインディングが続いてく。
レーが近づくにつれて谷間の景色が広大な大地になる。ワインディングがどこまでも続く一本の直線になる。どっちも日本では絶対にみれない景色。
廃墟みたいな建物がぽつんぽつんとあって数人の人たちが雨宿りしてる。
なんだか星新一の描く惑星みたいだなって思った。
ときどきレインコートを着てないバイクをみた。隣町までたどり着けるのかな…って興味がわいてしまう。
雨がひどくなってきて、
雨から逃げるようにレストランに入ってチョウメンを食べた。
レーに着いた時は夕方ちかくになってた。
レーの街は一方通行が多くてレンタルバイクのお店になかなかたどり着けなかった。
だからバイクを置いて歩いていった。
無事に10日間のスクーターの旅がおわった。ずっといっしょだったスクーターを失って羽をなくした喪失感があるかも。
これからは重い身体で動いていかなきゃいけない。
近くのきれなホテルに安くで泊れた。
宿を経営してるのはムスリムの人たちで、とても安くしてくれた。ムスリムの人たちって利益より人間関係を大切にする人が多い気がする。
そのホテルはすごく綺麗で、最上階の部屋からレーの巨大なゴンパがみえた。
この宿に泊まってレーに数日すごすのもいいかもって思った。
けど、もうスクーターはないし、前に進むことにした。
バスターミナルまで歩いて行って明日のシュリナガルまでのチケットを買った。
バスターミナルのスタッフはなんだか偉そうだった。
夜ご飯にいつもの小さな食堂で野菜のチャパティを食べて、隣の大きなモスクでお祈りした。
このモスクが綺麗でずっとホテルだと思ってた。
近くのカフェでぼーっとする。
そしたらさっきモスクでお祈りしてたよね?ってカフェの人にうれしそうに声をかけられた。
ぶっきらぼうで頑固そうなおじさんって思ってたのに、心を許されたのかな?