タブリーズ 2月9日
おじいちゃんのとこに行ったら朝食ができてた。
毅然としてるけど優しい人。
トーストとジャムとバターとゆで卵と紅茶。あったかい紅茶がうれしい。
どこ行くの?
バザール行こうと思うんだけど
やってないよ
え?ホントに?
年に1回のお祭りだからね
タブリーズのバザールは世界一古くて世界遺産にもなってた。バザールはいっぱい見てきたから、あまりがっかりしなかったけど。
朝ごはんを食べて宿をでる。
雨がふってた。
行くとこもなかったからバザールを探してうろうろする。野菜の市場はやってたけど建物が新しい。
でも、やっぱり今日は祭日みたい。街のほとんどのお店は閉まってる。
歩いてると道端でチャイが振る舞われてた。ヤカンから紙コップに注いで配られてる。みんなそれをもらって道端で飲んでる。
これって今日が祭日だからかな?
お菓子もくれた。イランの人は甘いの好きだよね。
川の近くに学校があって、親が子供たちを見送りにきてる。
タブリーズはイランの北にあって標高1300mの高山地帯、雨が寒かった。
雨は気持ちを冷たくする。街も人の空気も。
なんか寂しい風景にみえてくる。
シャッターの降りたバザールは何処までも続く洞窟みたい。薄暗いレンガの洞窟をてくてく歩く。ときどき人が集まっててるけど、それが何かはわからなかった。
食堂に入ってスープを飲んだ。
お店の人がガイドブック見せてっていうから、地球の歩き方を渡した。面白そうにページをめくってる。
すこし離れたテーブルには太った息子と痩せた父親の2人がご飯を食べてた。
お母さんが食べさせ過ぎなのかな?
お菓子屋さんでイランのお菓子を買った。
そういえば旅であまりその国のお菓子を買ったことなかった。もっと食べればよかったな…
右手にはお菓子の紙袋。
何処で食べよう?近くの公園?
公園を歩いてるとおじいちゃんに手まねきされる。ポットからチャイをもらった。
イランでは歩いてるだけで親切にされる。
旅を続けてるとそれを当然と感じるようにもなってて、なんでこの人は何もしてくれないんだろうって思ったりするようになってた。
私はまだ何も親切をしていなかった。
おじいちゃんが街を案内するよって言ってくれた、だけど私はお菓子が食べたくて断ってしまう。
その時にすこし寂しそうな顔をした。
帰り道に小さなモールを歩いてると、メタルみたいな髪型のおっさんにチャイをおごられた。
さっきのことで罪悪感があって、いっしょについてく。
モールの片隅の小さな部屋に古そうなオーディオ機材が並んでる。
これってカセットっての…
おじさん、言葉は通じないんだけど、身振り手振りでゆっくり話してきて楽しい。
ときどきアルメニアに行くって。お酒を飲みに行くのかな。
チャイを飲み過ぎてたのかも。
お腹痛くなって宿に戻った。
トイレから出たらイケメンがいて、めちゃめちゃキョドる。
その人はウィーンから来てた。
私1年前にウィーンに行ったよ
へー僕は父親がイラン人なんだよ
じゃあ、よく来るの?
初めて父親の故郷にきたよ
遅すぎるんじゃない?
いろいろあって、やっと時間ができたんだ
私はずっと旅してる
カスピ海の街が綺麗だから行ってみるといいよ、父親の親戚の家があってさ
へー、ガイドブックにも載ってない街だね
もう夜も始まってた。
外はまだ雨がふってる。
ガイドブックに載ってない旅先で教えてもらった土地。
きっと穏やかな丘が広がる沿岸の村だとおもった。